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世の中、単純に顔が良いとか以外にも美女の条件というものがある。
王族、貴族といった上流階級は特にだ。
まず髪が長い事。
ただ単に伸ばすだけではなく、下ろした時に腰で綺麗に切り揃えられている事。
これは伸ばす手間や、髪の手入れを任せられる相手がいる証となるらしい。
次にスタイル。
細く引き締まった腕と脚に、豊かな胸、くびれた腰。
胸はともかく、要は太っているのは駄目って事だ。
魔物との戦いが日常的な土地柄で、その先頭に立つべき貴族がぶくぶく太っていては台無しだ。
顔に関しては、目鼻立ちがはっきりし、均整がとれている事。
これは生まれつきのものだし、そこまで厳密ではない。
柔和かキツメか、好みの問題だろう。
セリアーナはキツメだな……。
ともあれ、手入れが面倒でも髪を伸ばし、維持する。
領内が安定し、思う様に美食に傾倒できても、堪えて運動をし、スタイルを維持する等、生まれ持った物よりも、日々の継続、努力を評価する傾向にある。
「どうでしょう?セラ、1日で仕上げられますか?忌憚のない意見をお願いします」
縋るようにこちらを見てくるどこかのお家の執事と、それを見てやや呆れた色を隠せないオリアナさん。
このおっさんのご主人は、どうやら近いうちに人前に出る必要があるとのこと。
多分女性だろうけれど、ちょっと育ち過ぎてしまっているらしい。
今までやってきた中で一番太っていたのは、最初にやったフェルド家の奥さんだが、あまり具体的には言いたがらないが、彼女よりもさらに太っている様だし、普通にやっていたら間に合わないんだろう。
「無理です」
きっぱりと言い切った。
「っ⁉でっ……ですが、一つの部位に1時間で終える事が出来ると聞いております!1日かければ可能なのではありませんかっ⁉」
実に必死だ。
切羽詰まっているんだろう。
「そりゃ、時間だけ見ればそうですけど……。負担も大きいですし、失敗するかもしれませんから、出来ません!」
それでも断る。
「結構。聞きましたね?たとえ陛下であろうとも無理を仰られればこの娘は断るでしょう。あなたの主にもそう伝えなさい」
王様引き合いに出してきたけれど……この人のご主人はそのレベルなんだろうか?
「さあ、お客人がお帰りですよ。案内なさい」
何か言いたげではあったけれど、オリアナさんはバッサリ切り捨ててしまった。
まぁ、無理を言っている自覚があったんだろう。
頭を下げ大人しく部屋を出て行った。
「ね」
「どうしました?」
「面倒だからやらないだけで、やろうと思えば出来るんだよ?」
そう。
【ミラの祝福】は身に付けたばかりの頃はまだまだ加減や工夫がわからず、1日1時間にしていたが、領都やルトルで鍛えた今では、膝に座ったり背中におぶさったりと、色々な方法で数時間程度なら広範囲に発動できるようになっている。
ちょっと頑張れば1日でそれなりの成果を上げられるだろう。
その事はじーさんを交えてルトルでの事を話した時に言ってある。
にもかかわらず、その事を口にしていなかったから、俺も合わせていたけれど……。
どこの誰かは知らないが、結構大物っぽい気がするんだけれど、大丈夫なんだろうか?
「大丈夫ですよ。あなたがどうしても行いたいと言うのなら止めはしませんが、そうでないのならそこまでする義理はありません。1日でなどと……事前に申し出ていれば慌てる必要などないのです。そもそも普段から節制していればいいわけですしね」
「まぁ……そりゃ確かに」
直近で外国の大貴族が王都にやって来たって話は聞かないし、もっと前からいたんだろう。
にもかかわらず、このドタバタ具合。
詳しい日程やどんな事情があるかも聞いていないが、何となく夏休みの宿題を最終日に大慌てで片づけるタイプ。
そんな子供達と近いものを感じた。
鷹揚ではあるけれど、根っこはきっちりしているオリアナさんとは相いれないのだろう。
「今回の事であなたに対しての横暴な振る舞いはまかり通らないと、いい宣伝になったでしょう」
いつになく辛辣な気がするけれど……ひょっとして嫌いな相手だったのかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




