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ガンっ!と強い音と共にウシを盾で横に弾き飛ばし……。
「はっ!」
それを野球のバッティングの様に両手で持った棍棒で打ち返し……。
「とおっ!」
俺の蹴りで止めだ。
こっちは終わり、後は……向こうか。
オオカミの群れが2組来ている。
「次あっち!オオカミが9」
びしっと指差しながらそう告げると即座に返事が返って来た。
「了解!俺が前に出る」
そう言うが早いか、走り出し一気に群れのど真ん中に飛び込んだ。
手にした槍を振り回しながら、連携を取らせないようにかき乱している。
「オーレルっそのまま駆け抜けな!あたしも続く!」
同じく槍を手にしたおばちゃ……もとい、姐さんが続いて突っ込んで行った。
2人の目論見通り、オオカミ達は連携が取れずもたついている。
そして、その隙にアレク達も復帰し、俺の前に出てきた。
これで後は1頭ずつ刈り取るだけ。
右脚に視線を落とすと、発動しバチバチとスパークしている【緋蜂の針】が見える。
今は使用人としてではなく客人として王都に滞在しているから、メイド服を着るわけにはいかない。
かと言って、用意されているドレスなんてもっての外。
そもそも浮いているからと言って、スカート姿でダンジョンに潜るのはあまりいいとは言えないからな……。
冒険者用の厚手の服は少し探せば置いてある店はすぐ見つかるが、今着ている服は、セリアーナの下に出入りする時用の服を仕立てた時に一緒に頼んだ代物だ。
黒のレギンスに白のハーフパンツ。
上着はシャツに黒のジャケット。
今はマントの様に羽織っているが、腰に巻く赤のストール。
ここまではありがちだが、次の点が違う。
パンツとレギンスは右だけ【緋蜂の針】対策でショート丈にしている。
これで発動しても破けることは無い。
少々パンクファッションになってしまったが……これでガンガンいける!
◇
今日一緒にダンジョンに潜ったのは、街の調査を一緒に行った冒険者達だ。
タイアー、レッド、オーレル、紅一点のリース。
皆30歳前後で、冒険者歴も長く腕も立つし頭も良い。
今日は本来アレクと行く予定だったんだが、その事をアレクから聞いた彼等が一緒について来た。
正直、ダンジョン浅瀬で1時間程度の狩りなんて彼等にとっては散歩程度にしか感じないだろうから、同行されるのは気が引けたんだが、ルトル防衛戦の報告を受けた様で【祈り】を受けてみたかったらしい。
二つ名こそ無いが、王都ではそれなりに顔が売れている様で、すれ違う冒険者達から視線を集めてしまった。
何とも懐かしい感覚だ。
「その加護は何か消耗はあるのかい?」
「今の所は何も無いよ?防衛戦でもずっと使ってたけど平気だったし」
「そりゃすごいな……。俺も強化は少しなら使えるが消耗が大きいんだ……」
魔法を使えるらしいレッドがそう言った。
アレクは換金に向かい、それを待っている間、質問を受けている。
アイテムもスキルも大人気だ。
「普段は蹴りだけなんだろう?お嬢ちゃんじゃーちょっと接近戦は危ないと思ったが、その玉と加護があるなら充分援護も出来るね。目玉と潜り蛇で周囲の安全も確保できるし……」
「うん。宙に浮いて【祈り】をばらまきながらポーション配達してたよ」
それを聞き、感心する4人。
ダンジョンだけでなく、外での依頼も受けたりするだけに、その有用性を理解してもらえたらしい。
【影の剣】は外しているし、【浮き玉】も走るより速い、と大分スペックを低く抑えて説明している。
念の為とは言え、それだとちょっと貧弱過ぎる。
あまり評価が上がり過ぎても困るが、侮られてもそれはそれで困る。
難しいところだが、いい塩梅に落ち着いたみたいだ。
「待たせたな」
そこへ換金を済ませたアレクが戻って来た。
「早かったな⁉今日は混んでいなかったのか?」
「時間が早いからな。まだ昼前だぜ?」
少し驚いたように言うタイアーに笑いながら答えるアレク。
やっぱり午前中だけの探索とかは経験が無いのか、この空き具合は知らなかったらしい。
まぁ、この小ネタが活用されることは無いんだろうなぁ……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




