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「……本当に行くの?」
「アレクシオは城に出向いておるからな。私しかおらんだろう。それとも日を延ばすか?」
俺の言葉に胸を張って言い返すじーさん。
屋敷の玄関ホールにはじーさんと、それを見送ろうと並ぶオリアナさんと、使用人達。
麻の上下にその上から魔獣の革で作られた防具を纏い、短槍を手に持ち腰には剣を差している。
普段もあまり華美な服装はしていないが、それでも一目で貴族とわかる格好だが、これだといっぱしの老戦士だ。
「…………」
最初は俺も延期しようと思っていたのだが、ノリノリでアレクの代理を申し出てきたのはじーさんだ。
三国志の黄忠だったかな?
老いてなお盛んの語源は。
確か70歳かそこらで敵将を討ったとか。
それを思えば、じーさんは60いくつか。
相手も浅瀬のモンスターだ。
庭で一緒に剣を振ってる時の姿を思い返すと、どうあってもやられるとは思えない。
オリアナさんを見ると、彼女も頷いている。
大丈夫なんだろう。
「わかったけど……潜ってから1時間で戻るからね?」
「それで構わん。なに、私も久しぶりだからな。無理をする気は無い」
「そか……んじゃ、行きましょー」
◇
「ふんっ!」
突進してくるイノシシを寸前で闘牛士の如く躱し、すかさず短槍を突き出し後ろ足を抉った。
バランスを崩し倒れたイノシシは、突進の勢いそのままにこちらに転がって来ている。
じーさんは既に別の個体に向き合っている。
こっちは俺が処理しろって事か。
「やれ」
シロジタを頭部に潜り込ませ核を潰した。
「ぉぅ……やっぱ楽だね」
核を潰せば消える死体。
処理に手こずっていた外でのことを思うと、ダンジョンが人気なのもよく分かる。
街から通えて、処理が楽であまり強くなく、何より魔物しか出ない。
外は外で、素材が欲しい時なんかはいいんだろうけれど、俺はダンジョンの方が好きだな。
「おっと……!」
背後から接近するコウモリに気付き、左手を振るう。
ガシャンと砕ける音と共に破片が突き刺さり落下していく。
シロジタが止めを刺しに向かうが、まだ残りがいる。
【影の剣】を振り回し、全て地面にたたき落とした。
一撃で決めようと思わなければ、もうコウモリも楽なもんだ。
「ちょっ⁉」
じーさんの方に向き直ると、2体のイノシシが倒れ、3体目の相手をしている。
ただ、まだ2体は生きているし、起き上がろうとしている。
「先にあっちだ!」
コウモリは後回しにし、まずはイノシシを倒そう。
◇
「じーさん、はしゃぎ過ぎじゃね?」
潜り始めてそろそろ1時間という所で、帰還すべく引き返すことにした。
その道すがら、先程までの戦闘についてあれこれ話していたのだが、じーさん……。
この一言に尽きる。
「わっはっは!すまんすまん。お前が予想以上に動けるもんで、ついつい昔を思い出してしまったわ。【祈り】か?アレも良かった!」
本人は暴れられたからか終始ご機嫌だ。
魔物を見つけては合図も無しに突撃していき、戦闘を始めていた。
止めはこちらに回してくれるし、別に構わないんだけれど、【琥珀の剣】はあまり試せなかったのが少々残念。
もっと上層の奥まで行くと妖魔種なんかも出て来るそうだけれど、浅い所じゃ魔獣が中心だからあまり向いていない。
シロジタの訓練にはなったかな?
「しかし……お前の恩恵品はあまり魔物との戦闘向きとは思っていなかったが、中々うまく使いこなしているな。2匹のヘビもだ。以前滞在していた時は上層で手こずっていると言っていたが、今ならもう問題無いのではないか?」
魔物しか目に映っていなかったと思ったが、よく見ているじゃないか。
「どうだろう……。ここは奥に行けば行くほど一度に戦う数が増えていくし……オレは弱い魔物相手を一体ずつ仕留めるのが向いているから……」
魔法やらアイテムで小細工を駆使してなんとか誤魔化しているが、リーチが短いため一対一の接近戦しか出来ない。
【緋蜂の針】と【影の剣】の突進、回転のコンボも結構運だよりな所があるし……我ながら課題は多いな。
「なるほどな……お前自身がまだまだ成長が足りんか」
「そーいうこと」
今の体のサイズ、筋力じゃ出来る事が少なすぎる。
しばらくは今のスタイルで行くかな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】4枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




