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ドンドンと部屋のドアを叩く音。
この強さはアレクだな。
「セラ、起きているか?」
当たりだ。
「おきっとるっよー。開けていいよー」
ストレッチ中の為変な区切り方をしたが、しっかり聞こえた様でドアを開け入って来た。
麻か何かの上下でラフな格好だ。
今日はもう出かけないのかな?
「悪いな。明日の事で話があるんだ。昼から何も用事が入っていないんだろう?」
明日?
「うん。本当は明日服の採寸に来るはずだったけれど、今日になったからね。明日は何も無し。何かあるの?」
「ああ。俺が今王都内の調査をしているのは聞いているか?教会や外国人住居のある北街を明日見て回る予定なんだ。そこでお前の力を借りたいんだが、頼めないか?」
俺の力……アカメとか【妖精の瞳】かな?
「難しい事じゃ無ければいいけど……何するの?」
「俺達と一緒に来てくれたらいい。その際に潜り蛇と【妖精の瞳】を使って、どれ位の強さの者があの一画にいるか、大体でいいから教えて欲しいんだ。やれるか?」
「はぁん……偵察みたいなものかな?それならいいよ。昼からだね?」
「ああ。昼飯後に呼びに来るよ。戦闘にはならんだろうし恰好は適当でいいからな」
「あいよ」
◇
北街……一度セリアーナに付き合ってパーティーに出かけ、そこで攫われた思い出しかない。
あれ以来一歩も踏み込まなかったからな……。
ミュラー家の屋敷がある貴族街は王都の南街だから、ちょうど反対側だ。
教会はもちろん、西部諸国の貴族や商会主がデカい屋敷を構えている、ハイソなエリアだ。
そんな場所だけにあまり人通りは無く、巡回の兵士や屋敷の門前に立つ警備の私兵位しか目に入らない。
警備の緩い所、厳重な所と色々あるが、探るにしても露骨にキョロキョロするわけにもいかないし、俺向きだな。
「どうだ?」
北街に入り、差し当たっての目標としていた教会に着いたところで、結果をアレクが訊ねてきた。
アレクの他にルトルへやって来ているクランや戦士団の一員で、王都で情報収集や物資の手配を行っている者達だ。
男性2人に女性1人。
魔力こそそれ程ではないが、皆結構強い。
アレクを先頭に俺が中心に浮きながら進み、その3人が周りを固める様に位置している。
「それなりに強そうなのは見えたよ。はい」
北街の簡単な見取り図を渡されていたが、中央広場から教会までの道中で目についた箇所を人数と共に記してある。
それをアレクに渡すと、他の3人も覗き込んでいる。
アカメだけじゃなくシロジタも加わった事で、モノラルからステレオになったというか、今までだと距離があるとぼやけていたがよりはっきりとわかるようになった。
問題は俺の処理能力が追い付いていない事か……。
そのうち慣れるんだろうか?
「……セラ、ここにはいなかったか?」
「ん?」
しばし見取り図を見ていたアレクが指した箇所は……確か警備の兵の数が多い上にやたら高い壁の屋敷だ。
目立ったからしっかり確認していたが、他は特に何も無かったな。
「うん。庭とかに兵が見回っていたけれど、特別強そうなのはいなかったよ?」
「そうか……どう思う?」
3人に意見を求めあれこれ話し込んでいるが、何かあるんだろうか?
「そこは何かあんの?」
「ん?……そうだな、戦技会は知っているな?」
もちろんと頷く。
「お前の記した屋敷はそれに参加する者が滞在している所で、人数も把握している通りなんだが……、あの屋敷は西部で幅広く商いをしている大手の商会の持ち物で、毎回戦技会には戦士を送り込んでいるんだ。……既に到着していると思っていたんだが、まだなのか?」
腑に落ちないって顔だ。
「まだ2月近くあるが、到着していない可能性は?」
「どうだろうな。稼げるダンジョンもあるし調整の為にも遅れてくるとは思えない」
「外に出ているってのは無いんだよな?」
「ああ。朝の巡回の報告で、屋敷を出入りした者はいないと受けている」
あーでもないこーでもないとひとしきり意見を出し合い、またまた考え込む4人。
一見真剣だし、実際お仕事なんだろうけれど……こいつら探偵ごっこ楽しんでないか?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




