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「よく来たな。まずは中に入りなさい。荷物はこちらで運ばせよう」
ミュラー家の王都の屋敷に着くと、連絡を受けていたじーさん達が出迎えてくれた。
城に着いた後も雨が弱まることは無く、距離も近いし俺だけ傘さして行こうかと考えていたが、リーゼルが話を通してくれた様で、馬車を出して貰えた。
ありがたや。
さて、じーさん自ら案内した先はじーさんの部屋だった。
中ではオリアナさんが待っていて、俺達の席の準備も出来ている。
「どうぞ座って」
じーさんが座ったのを見計らい、着席を促されたので俺達も座るとすぐにお茶が運ばれてきた。
普段からセリアーナと一緒にいる事が多いとはいえ、俺がもてなされる側に回ることは無いから、ちょっと新鮮な気がする。
「さて……改めて、よく来たな。一昨年と違いこれから約2か月半、お前達は我が家の客として遇しよう。何かあれば遠慮なく言いなさい」
「はっ。私はギルドなどに出向く為屋敷を空ける事が多くなりますが、その間セラをよろしくお願いします」
「よろしくおねがいします」
じーさんの言葉に、アレク共々頭を下げ……ん?
「あれ?アレク仕事あんの?」
「ああ。他にも城での護衛の打ち合わせなんかに行く事があるな。何かあるのか?」
「何ヵ所か道具屋の紹介状を書いてもらってたから、ついて来てもらおうと思ってたんだけど……」
セリアーナを狙う組織の事は脇に置いて、単純に王都は人が多い。
只でさえ、記念祭に加えセリアーナの結婚式が控えているから、今年は特にだ。
ある程度自由にしていいとは言われているが、1人で出歩くことは控えるよう言われている。
知らない人について行ったり、変な事に首を突っ込むようなアホな真似はしないが、それでも何があるかわからない。
護衛兼荷物持ちとしてついて来てもらおうと思っていたんだが……。
「それは私が付き合おう。セリアーナからもお前の事を頼むと言われているからな」
「あら……」
じーさんだとちょっと気軽に連れまわせないな。
「セラ」
まいったな……と、口には出さないがその思いが顔に出ていたのか、今まで聞き役だったオリアナさんが口を開いた。
「私達もあなたに頼みたいことがありますから、遠慮はいりませんよ。もちろん私にでも構いません」
「うむ。予想は付くかもしれんがお前の加護を受けたいという者が多数いてな。セリアーナについてお前も王都に来るだろうと、せっつかれておった。ある程度こちらで調整はするが、引き受けてもらいたい」
「……はーい」
おっさんおばさんにモテモテだな……俺。
◇
「……ちゃん。セラちゃん!もうすぐお昼ですよ?」
寝室の扉を叩く音と一緒に聞こえてくる俺を起こす声……。
もう少し寝たいが、何となく朝も起こしに来たのを無視した事を覚えている。
2日目でこれはいかん気がする。
「……はーい」
「……開けますよ」
何とか絞り出した声が却って怪しく思われたのか、中に入って来た。
「着替えはここね……。今日は出かけないんでしょう?適当に選びますよ」
そう言うなり、着替えを突っ込んでいるタンスを開け中から服を選んでいる。
もう全部任せてしまおう……。
窓の外を見るとさほど強くは無いが、しっかり雨が降っているし、今日も部屋でダラダラ荷物の整理をするかな……。
俺が与えられた部屋は、応接室と寝室が付いた以前セリアーナが使っていた部屋だ。
使う人がおらず空いていたそうだが、それでも何で俺に?
と思ったが、【ミラの祝福】の施療に一々部屋を移動するのも面倒だし、応接室で施療できるようにと気を使ってくれたんだろう。
「はいっ、これにしますよ」
選んできたのは薄い緑のゆったりした飾り気のないワンピース。
それをベッドに置き、俺の寝巻を脱がしにかかった。
一応客人であるから、メイド服を着るわけにもいかず、念の為にと【隠れ家】に詰め込んでいた服を着る事にしている。
メイド服は着る物を選ぶ手間が省けてよかったが、まぁ、人任せにしているし、大差は無いか。
「食事を隣に運んできますから、寝たらダメですよ!」
俺の着替えを済ませ、そう言うとパタパタ部屋から出て行った。
まさに上げ膳据え膳。
あぁ……ダメになりそう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




