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リーゼルへの報告が終わると、俺たちは再び隣室に戻って仕事に取り掛かった。
俺は商業ギルドに出向く前と変わらず、応接用のスペースを独占してゴロゴロしているだけだったけどな。
まぁ……それはさておいて、隣室での報告が思ったよりも時間がかかったこともあって、執務室に戻って来てから程なくして昼食の時間になった。
普段だと俺たちと職員は別の食堂を利用するんだが……今日は久々にセリアーナが職務に復帰したからってことで、リーゼルに誘われて一番大きい食堂で食事をすることになった。
リーゼルはハッキリとは言わなかったが、どうやら女性陣が食事の席で大人しすぎるから、俺たちに様子を見て欲しい……って感じだった。
最近は女性の文官も増えてきているが、それでもまだまだ執務室で働く者たちの大半は男性だし、セリアーナやエレナがいなければ女性の上役ってのがたまに来るテレサくらいしかいないからな。
職場が職場だから仕方がないとはいえ、緊張するし居心地もあまり良くはないだろう。
今は俺たちが一緒だからか、大分リラックス出来ているみたいで、食事をしながら会話も楽しめているようだ。
もっとも、彼女たちに話を振ったり場を仕切っているのはエレナで、俺とセリアーナは聞き役に徹している。
こういう席だと場を仕切るのは身分が一番上の人ってのが相場だが……セリアーナに話しかけられても却って喋れなくなるかもしれないしな。
適材適所だ。
ってことで、俺とセリアーナは商業ギルドでのことを話し合っていた。
「セリア様はどう思う?」
商業ギルドお抱えの冒険者たちの件を話し終えて、セリアーナの考えを訊ねた。
俺は単純に、一の森に近づく隊に同行させるには信頼関係が築けていないからって理由で拒否した。
リーゼルは、彼自身は否定はしないけれど、あくまで現場に出る責任者である俺の判断に任せるって感じだ。
セリアーナを眺めて彼女の返事を待っていると、「いいと思うわ」と、特に考えこんだ様子もなくすぐに答えた。
「……随分簡単に答えたね」
勝手に拒否はしたけれど、一応商業ギルドと冒険者ギルドの関係にも関わって来そうなんだけどな。
事前に相談を受けていたリーゼルならともかく、今この場で聞いたセリアーナがここまで興味がなさそうなのはどういうことなんだろう?
「この件は商業ギルドの問題でしょう? どう転んでも直接私たちの損にはならないのだし、それならお前の好きにしたらいいわ」
俺はもっともだなと食堂内に軽く視線を這わせてから「……なるほど」答えた。
セリアーナが言うように、確かに拒否しても受け入れてもセリアーナには大して影響のない話ではある。
俺たちの会話に聞き耳を立てているような者はいないが、それでも周りに人がいる状況で、自分たちに影響がないのに商業ギルドの動きについて真面目に話すことはないだろう。
セリアーナもそのつもりなんだろう。
「フッ……」と笑ったかと思うと、話題をフィオーラの件に切り替えた。
「クラウスたちはどうするのかしらね?」
「どうなんだろうね……? オレも何かいい案がないか聞かれたけど、何も思いつかなかったしね。もちろん、どれだけ手間をかけてもいいっていうなら別だけど……」
一の森のさらに奥に進んで森を越えた先の素材……とかなら喜ぶかもしれないけれど、流石にそれを用意するってのは現実的じゃない。
そもそも冒険者ギルドがそんな依頼は拒否するだろう。
それこそ、商業ギルドのお抱え冒険者たちに依頼するような案件かもしれないが……多分達成出来ないだろうな。
「私は一つ手間がかからないものが思いつくわよ?」
「ん? 何?」
セリアーナの言葉に首を傾げると、彼女は笑いながら無言でこちらに指先を向けた。
「オレ? ……あぁ、【ミラの祝福】か」
確かにアレならいけると思うが……クラウスの依頼で俺が動くことはないだろうし、無理な話だな。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




