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「少し前からクラウスに商業ギルド内でそういった話が出ているとは聞いていたんだ。もっとも、少数派だから無理に押さえ付けたりしなくてもどうにでも出来ると言っていたんだが、ここ最近の状況の変化で、商業ギルド内の事情も変わってきたそうなんだ」
リーゼルは困ったように笑っている。
状況の変化と言うと……。
「北の森とかカエルもどきとか……魔物絡みの件ですね?」
コレだよな?
想定外の出来事が短期間で纏めて起きたし、それに対処するために領地の方針も色々変更することになってしまった。
商業ギルドも武具や消耗品の調達で関わっている。
「ああ。騎士団や冒険者の活動範囲や内容に変化が出来る。三番隊がいい例だね。まあ……結局は領内の魔物討伐と開拓という意味では大きな変化はないんだが、多少は危険度は下がるだろう?」
「面倒な魔物はいるし油断は出来ないけれど……一の森の奥に入っていくわけじゃないですからね。だから商業ギルドの冒険者でも関われると思ったのかな?」
「そう報告を受けているよ。魔境の開拓に関係することならともかく、領内の……それも各街や拠点を中心に行動するのなら、自分たちも商隊を送ることがあるし無関係じゃないからね」
「それは……確かに」
商業ギルドに雇われている冒険者が魔境に入るのは、緊急で必要な物があるのに冒険者の都合がつかない場合の、謂わば最後の手段的なものだし、もし雨季明けの騎士団の予定が当初のものだったら彼らも何も言って来なかったかもしれない。
ただ、自分たちが関与出来る範囲内だと知ったのなら……自分たちもって言って来るのもわからなくはない。
だが……そうなるとだ。
「別に参加したいって考えるのは悪いことじゃないよね? まぁ……どのみち断ったとは思うけど」
多数派とか少数派とか関係無しに、商業ギルドの通常の活動にも繋がることだし、参加を検討することはおかしなことじゃない。
わざわざ碌に説明もせずに俺を商業ギルドに向かわせて、さらに向こうでクラウスの様子から察しろって面倒なことをしなくても、よかったのに……。
俺が首を傾げていると、リーゼルは肩を竦めながら笑った。
「クラウスはあくまで活動は商業ギルド内に留めるべきだと考えているが、僕も参加自体は悪いことではないと思う。もちろん積極的に推す気はないけれど、その辺りは自分たちで協議する問題だね」
「だからオレに判断させたんだ? もし了承していたら?」
「もし君が同行させても構わないと判断したのなら、ちゃんとオーギュストも交えて期日までに調整していたよ。僕たちで決めてしまっても良かったんだが、一先ず短期間とはいえ、直接率いるのは君だからね。不意打ちみたいな真似をしてしまったのは申し訳ないけれど、君に選んで貰いたかったんだ」
リーゼルは喋りながら机の上に置かれている紙束から一枚抜き取ると、改めてこちらを見た。
「さて……改めて報告を聞かせてもらっていいかな? 今後のためにもオーギュストと情報を共有しておきたいんだ」
「はいはい……」
そんなに我儘を言うつもりはないが、それでも俺の判断基準ってのをリーゼルたちも把握しておきたいんだろう。
俺は返事をすると、真面目に質問に答えるために【浮き玉】の上で居住まいを正した。
◇
商業ギルドのお抱え冒険者を同行させたくない理由から始まって、アレコレとリーゼルから質問を投げかけられては答えて……というやり取りを繰り返していると、随分な時間が経っていた。
最終的に昨日の魔導研究所の件でクラウスたちがフィオーラへの詫びの品で悩んでいる……なんてことまで話してしまったからな。
その様子が思い浮かんだのか気の毒そうな表情をしていたが、フィオーラはリーゼルでも命令出来ない相手で、どれ程クラウスたちが困っていても力にはなれない。
「……上手く彼女が気にいる物を見つけられるといいね」
最後にそう言って、リーゼルは話を終わらせた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




