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執務室に戻ってくると、俺がリーゼルの机に向かう前に彼の方からこちらにやって来た。
どうやら商業ギルドでどんな話をしていたのか予想出来ているようで、いつも通りの笑顔ではあるがどこか申し訳なさそうにしている。
「お帰りセラ君。商業ギルドへの連絡を引き受けてくれて助かったよ。……クラウスは何か言っていたかい?」
やっぱりか。
「今度の調査に商業ギルドの冒険者を同行させられないかって言ってましたよ。どんな形でもお断りって言いましたけどね」
そう言って「フンッ」と息を吐いて腕を組むと、苦笑しながら奥の部屋を指した。
「詳しい話を向こうで聞かせてもらえるかい?」
概ね彼らの考えは俺もわかってはいるが、それでも向こうでは職員が周りにいたから問いただすことは出来なかった。
リーゼルは俺から話を聞きたい……と言っているが、どちらかと言うと俺への説明をしたいんだろうな。
「……いいですよ。セリア様は?」
俺はリーゼルに返事をしながら、自分の執務机で仕事を片付けているセリアーナに視線を向けるが、彼女は興味がないようで、視線を追い払うように手を振っている。
「セリアはこちらに残るようだね。行こうか」
リーゼルはセリアーナの方を見て一度頷くと、部屋の文官たちに指示を出しながら隣室に向かって歩き始めた。
◇
隣室に入ってドアを閉めて……リーゼルがソファーに座ると、まずは「済まなかったね」と謝罪の言葉を口にした。
「別にいいですよ。商業ギルドも大変みたいですね」
テーブルを挟んで向かいに移動してそう言うと、リーゼルは肩を竦めながら「まあね……」と呟いた。
「元々商業ギルド内は、君たちセリア側と距離をとろうと考える者たちが多数派で、君たちと繋がりを深めようと考える者はほとんどいなかったんだ」
「オレたちは別派閥だってことになってますしね」
「実際は違うし、上の連中はもちろんそのこともわかっているんだけどね。それでも、リアーナ領の商会は僕が、ゼルキス領の商会はセリアーナが面倒を見るように分けているから、傍からだとそう見えるんだろうね」
「セリア様はあんまり商会とは関わらないし、別にそれで何か困ることもないですしね」
大体消耗品とかは屋敷で仕入れるし、もし必要な物が出たら適当に屋敷に呼んだり……精々付き合いはその程度だ。
贔屓にする商会や職人がいれば別だが、セリアーナはその辺はあっさりしているからな……。
特にこだわりがないし……それならってことで、実家にいた頃から縁のある商会に任せることがほとんどだ。
「取り扱う主力商品が被らないから、それでも問題はないんだけれどね。まあ……それはさておいてだ。商業ギルドはクラウスがトップで、その地位を保証する後ろ盾として僕がいるけれど、あくまでリアーナの有力商会の連合体みたいなものだからね。幹部級の意見を封殺することは出来れば避けたいんだ」
「それこそ取り扱う商品が違いますしね。揉めて離脱とかされたら大変だ……」
仕入れ先が限られているリアーナだと、なんでも取り扱える商会ってのはほとんどなく、なにかしらの主力ジャンルを決めている。
んで、付き合いのある商会同士で融通し合ったりしているわけだし、リアーナの商業ギルドもその関係の延長だ。
「そうだね。それで……今回の件だが、簡単に言うと商業ギルドの立ち位置をどうするかって話なんだ」
「ほぅ?」
「あくまで商売上の付き合いを維持するか、手持ちの戦力を使って冒険者ギルドや騎士団との連携を深めていくか……だね」
「あぁ……それで、オレの調査に同行させようか……って話が出て来たんだ」
「後者の目的の一つは、いずれ創設される三番隊への関与だろうね。クラウスはもちろん前者だ。あくまで商人の護衛や緊急時の素材採集を除けば、自分たちは商売に専念すべきだ……ってね」
「なるほどねぇ……」
だからこそ、あの場で俺にハッキリと否定して欲しかったんだな。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




