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使いの彼は話が終わると足早に部屋を出て行った。
通路で見かけた時はそんなに嫌々ここに来ている様子はなかった。
彼だけじゃなくて、外にまだ並んでいる者たちもそうなんだが……フィオーラがここまで不機嫌になっているのは想定外だったんだろうな。
俺たちがやって来たことで多少はマシになっているが……普段から彼女に接していない者にとっては恐怖を感じるには十分過ぎる。
どれくらいの時間並んでいたのかわからないが……気の毒なことだ。
「ふう……とりあえず一息つけるわね」
一方、フィオーラは研究所に俺たちが入って来た時に比べると、随分と晴れやかな表情を浮かべている。
次は俺たちの番になったからだな。
まだまだ外には待機している者がいるのに、俺たちがそこに割り込んだ形になっているが……仕方がないだろう。
それにしても。
「お疲れみたいだね。外の人たちを断ったりは出来ないの?」
俺が訊ねると、フィオーラはこちらに視線を向けると肩を竦めた。
「団長だったり各ギルドの支部長の紹介状を持っているのよ。流石に断ることは出来ないわ」
この魔導研究所は屋敷の地下にあることからわかるように、騎士団と同じように一応は領主の直轄組織だったりするため、基本的に領主や騎士団や各ギルドの依頼は優先的に受けているのは知っている。
ただ、フィオーラの能力に大分頼っている部分があるし、彼女自身も領地どころか国内でもかなり上位の存在だ。
依頼を出して頼みを聞いてもらうことはあっても、フィオーラに命令を聞かせるのは、リーゼルでもセリアーナでも出来ないことだ。
そのフィオーラが、商業ギルドの職員たち相手に渋々面会を受けている……ってのは、今の街の状況を重く見ているのかもしれない。
領地にとっては助かることなんだが……フィオーラへの負担が大きそうだな。
「二人揃ってってことは、外の様子を見て来たんでしょう? こんな恰好で申し訳ないけれど、聞かせて頂戴」
「うん……まぁ、今更気にしなくていいよ。ねぇ?」
「ええ。報告と言っても、大したことはないし……楽な恰好で聞いてください」
エレナはフィオーラに苦笑しながらそう言うと、彼女の向かいの席に腰を下ろした。
◇
フィオーラへの報告はすぐに終了した。
まぁ……雨足は確かに弱まっていて、街の東側でこちらの様子を窺いに出て来た魔物と一戦終えて来た……ってだけだからな。
騎士団本部のアレクと同様で、あくまで俺たちの意見も欲しかったってだけだし……こんなもんか。
魔導研究所を出た俺たちは、真っ直ぐ屋敷に向かって移動をしている。
相変わらず通路には面会待ちの列が残っていたが、俺たちが来た時よりも並んでいる者たちの表情は硬かった。
俺たちと一緒に研究所に入った彼が、出て行った時に中の様子でも話したんだろうな……。
だが!
俺たちと話したことで、フィオーラの機嫌は大分マシになっている。
あの分なら、列を消化するまでは持つだろう。
「んで……街の様子を伝えてきたのはいいとして……フィオさんから頼まれたのはどうする?」
エレナを見てそう訊ねると、彼女は「どうしようか……」と考え込んでしまった。
エレナは考え込んでいるが、実はフィオーラの頼み事はそんなに難しいことではない。
今日はこのまま片付けられそうだが、明日以降も続くと鬱陶しいし、そもそも作業の手が止まってしまうから邪魔でしかない。
それを解決するために、フィオーラはリーゼルに街に対して何かしらの声明を出して欲しいそうだ。
実際に作業の邪魔になっていたし、商談は屋敷の文官たちでも任せられる内容ってこともあり、一々自分の元まで持って来たりしなくてもどうとでも出来るだろう……ってことらしい。
「伝えるだけでいいのならオレが一人でパパっと行ってくるよ?」
エレナは一旦着替える必要があるし、フィオーラの言葉を伝えるだけでいいのならその方がずっと早いだろう。
俺の言葉に、エレナはしばし迷っていたが「お願いするよ」と頷いた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




