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案内されるままに研究所に入ると、入ってすぐにあるいつも作業用のデカい机じゃなくて、奥の応接用の席にフィオーラが座っていた。
何やらウンザリした表情を隠す気もないみたいだし、大分疲れているみたいだ。
こちらを見ずに、目を閉じて腕を組んでいる。
作業の場から離れているってことは、やはりフィオーラが外の通路に並んでいた人たちの応対をしていたんだろう。
ちなみに、外の行列の先頭だった彼も一緒に部屋に入って来ている。
元々彼が呼ばれたわけだし、それ自体は別に構わないんだが……その彼はフィオーラの様子に気まずさでも感じているのか、用事があってやって来ていたはずなのにドアの前で立ち止まっていた。
一先ず彼に向かって「行ったら?」とフィオーラの方を指したが、中々足が前に出ないようで案内役の職員に視線を向けた。
その視線に気付いた職員は、肩を竦めて「やれやれ」と首を横に振ると。
「フィオーラ様、次です。それと、セラ様とエレナ様もお越しになりましたよ」
初めはうんざりしたように溜め息を吐いてこちらを見もしていなかったが、俺たちの名が出ると「セラたちも?」と顔を上げた。
隠す気もないあからさまな変わり様に、彼が気を悪くするんじゃないかと他人事ながら不安になったが……まったく気にした様子はない。
それどころか、フィオーラの機嫌が良くなったことにむしろホッとしているようだった。
さらに。
「お二人はこちらに……」
職員がそう言って、作業用の机の側にある椅子を持ってこようとしたが。
「二人もこちらに来なさい。貴女たちにも聞いてもらった方が後の手間が省けるわ」
フィオーラは職員を制止すると、「構わないわね?」と彼に向かって言い放った。
彼も即座に「もちろんです」と返事をしているが……俺たちが同席していいものなんだろうか?
どうしようかとエレナに視線を向けるが、彼女もいまいちこちらの状況が把握出来ていないこともあって、困惑していた。
とはいえ、フィオーラに呼ばれているのにそれを無視するわけにもいかないよな。
結局、エレナが「……行こうか?」と向かい始めたので、俺も「そうだね」とついて行くことにした。
◇
さて、何故かわからないまま二人の話に同席していたが……一先ず彼の話を黙って聞いていた。
彼は商業ギルドの使いで、フィオーラに仕事の依頼にやって来たらしい。
雨季明けに領都にやって来る冒険者たちの行動に、何かと制限がかかってしまう可能性がある……ってことは、もう商業ギルドも予測しているそうで、それに対しての備えだ。
冒険者たちを一時的に雇用先から切り離して、その間ウチで活動してもらう……って感じだな。
んで、その間の冒険者たちのサポートを商業ギルドが行うつもりらしい。
商業ギルドが確保している素材を提供するから、各種ポーション類や消耗品を用意して欲しいって話なんだが……それ自体は別に問題があるわけじゃない。
むしろ、領都内の商会からごっそり買い占められるような事態を避けられるし、歓迎されることではあるな。
それでどうしてフィオーラが不機嫌になっているかと言うと……どうやら彼だけじゃなくて、今までの訪問者も、外で並んでいる者たちも同じ用件で来ているらしい。
商業ギルドが一括で全部を取り纏めるんじゃなくて、加盟している商会がそれぞれ依頼を出して、商業ギルドの職員が個別に対応した結果が……こうなったんだとか。
フィオーラもこれが数件程度だったり、違う内容だったりしたのならここまで不機嫌さを表に出すようなことはしないんだろうが……同じ内容の話をずっと聞かされているんだからウンザリするのも無理はない。
とはいえ、まだ騎士団とも冒険者ギルドとも何の取り決めもない状況で、商業ギルドが勝手に動くわけにもいかないよな。
「どっちも大変だな……」と考えながら、商業ギルドの彼が恐縮しながらフィオーラと話す姿を眺めていた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




