2068
オーギュストは俺たちに礼を言うと、今度は文官を集めて何か協議を始めている。
恐らく、他所から来る冒険者たちへどの程度便宜を図るかを決めるんだろう。
その様子を眺めていると、わから外れて来たアレクが「セラ」と声をかけて来た。
「ん? どうかした?」
「一の森や周辺に魔物の気配はなかったんだな?」
オーギュストはそこまで重視していなかったけれど、やはり魔物の相手をする機会が多いアレクはそこが気になったらしい。
「奥まで行ったらどうかはわからないけど、街道周辺から見える範囲にはいなかったね。領都の東から南回りで戻って来たけど、どこもそんな感じだったね。北と西は……さっきの話に出た冒険者たちが見て回ってるから、何かあれば冒険者ギルドから話が来るはずだよ」
「街の上空からだけど、少なくとも戦闘の気配はなかったし……向こう側も異常はないと思うわ」
俺とエレナがそう答えると、アレクはホッとしたような表情を見せた。
「何か気になることでもあった?」
「しばらく領都を離れていただろう? それでも一応は、ここ最近の魔物の動きに関しては報告されていたんだが、一の森の拠点にも随分行っていなかったからな」
「確かに……戻って来ても中々外に出る余裕はなかったわね……」
肩を竦めながらぼやくアレクを見てエレナが笑っている。
「魔物は増え過ぎても問題だが……減り過ぎても厄介な事態を引き起こすだろう? 東門の兵たちから報告は毎日上がっているが……身内の意見も聞きたいからな」
「アレクはしばらくは領都にいるの?」
「手が空けば領都周辺の巡回に出たいが……この分だと難しいだろうな。ただ、一の森の拠点の人員交代があるが、その際に俺も同行するつもりだ。もっとも、帰還する隊と一緒に俺も戻って来るがな」
「日帰りなんだね」
「向こうの状況も気にはなるが……今は俺が領都を離れるわけにはいかなそうだからな。お前の探索の情報を当てにさせてもらうよ」
アレクはそう言うと、再びオーギュストたちの下に戻っていった。
騎士団内でのアレクの立場と、彼の代理を任せられる者がいないことから、気になることはあっても自重しているみたいだ。
ジグハルトとは違うな……と考えていると、エレナも同じことを考えていたのか、「仕方ないね」と苦笑しながら呟いていた。
◇
騎士団本部での報告を終えると、これ以上俺たちがここで出来ることはないし長居は不要だなってことで、フィオーラの下に向かうことにした。
そもそも俺がエレナを伴って外を見て回っていたのは、フィオーラから外の様子をエレナと見て来て欲しいって頼まれたからだ。
外でも街でも色々あったから、先に騎士団の方に報告に来たけれど……ようやく目的を達成出来るな。
「君が言っていたように、普段とは違う顔触れが足を運んでいたね」
地下通路を移動していると、エレナが小声で話しかけてきた。
「騎士団本部のこと?」
彼女に顔を向けると「そうだよ」と頷いている。
「商業ギルドとか商会主とか……普段は護衛や商談で冒険者ギルドの方に行ってるし、中々こっちには来ないよね」
もし騎士団に用事があっても、ゾロゾロと連れ立ってやって来られても邪魔になるだけだ。
そのため、代表してトップ連中が訪れることはあるが、今日のようなことは滅多にない。
「これまでも前年とは違う状況になってばかりだったけれど……それはあくまで発展したことが理由だったよね。他所の領地での対応を参考にしたら乗り切れたけれど、今回はまた少し事情が違うし……大変だろうね」
外からの客が訪れても、領内でどれだけ自由に動けるかわからないし、彼らが連れて来た冒険者にも制限が付いてしまう状況だ。
戦争の影響だったりと、その理由は色々あるが……参考に出来る前例はあまりないだろうし、文官だけじゃなくて皆が頭を使わないといけないんだろう。
そんな中、俺は一の森の調査を終えてしまえば屋敷に引き籠るわけだが……まぁ、俺抜きで皆に頑張ってもらおう。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




