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冒険者たちに先制を許してしまい、これは勝てないと判断したようで二体の魔物が一目散に森に向かって逃げ出している。
種族はコボルトで、五体はちょっと多いが一つの群れとしては十分許容範囲だ。
俺が確認出来る範囲に他の魔物はいないし、本隊の存在は警戒しなくていいだろう。
余程慌てているのか、上空を確認せずに前だけ見て走っているから俺たちにも気づいていないし……これならひと当てしたら仕留められるな!
「んじゃ、ちょっと片付けてくるよ!」
エレナに断りを入れると、俺は一気に魔物目がけて降下していく。
頭上に迫ったところでようやく俺に気付いたが、コボルト程度じゃもうどうにも出来ない位置だ!
「はぁっ!!」
まずは先頭の一体の頭部を右足で踏み潰し。
「ふっ!!」
驚いて足を止めたもう一体の首目がけて右手を振り抜いた。
これで戦闘から逃げ出した二体は仕留めた。
だが、まだ生き残りがいたはずだ。
それはどうなったか……と前を向こうとしたが、「向こうはもう片付くよ」と言いながら上からエレナが下りて来た。
「鮮やかなものだね。以前よりも腕が上がったんじゃないかな?」
「そうかな? そうだと嬉しいけど……」
エレナは二体の魔物の死体を眺めて、確実に死んでいるかを確認している。
まぁ……頭が潰れたり首を刎ね飛ばされても死なない魔物もいるが、コイツらはそうじゃない。
それよりも。
「濡れなかった?」
すぐに片付けられたとはいえ雨の中【風の衣】の範囲外に出てしまったのに、エレナが濡れた様子はない。
雨は降っているよな?
首を傾げていると、エレナは笑いながら軽く腕を伸ばしてこちらに見せた。
「君が下に向かったと同時に、周囲に風の魔法を弱く放ったからね。腕を伸ばした際に少しは濡れてしまったけれど……大したことはないよ」
そう言って、軽く魔法を放って魔物の死体を転がした。
「なるほどー……」
長時間は無理でも、瞬間的に周囲の雨風を散らす程度なら魔法でも可能なんだろう。
こちらの二体が死んでいることを確認したエレナは、さらに周囲の様子を探っている。
「向こうも片付いたみたいだね。周囲に魔物の気配はないと思うけれど……どうかな?」
「上から見た限りだと、草原にも街道にも森にも……こっちに来るような魔物の気配はなかったよ。コイツらだけみたいだね」
「……それなら、大規模な群れの一部ってわけじゃなさそうだね」
ホッとしたような声でエレナが答えると、死体に火の魔法を放って燃やし始めた。
◇
俺が倒した二体の処理を終えると、話を聞くために冒険者たちの下に飛んで行った。
だが、その前にこちらの死体の処理も手伝うことにした。
彼らは魔法が使えず処理用の魔道具も所持していなかったし、門前の兵の下に戻ろうとしていたんだよな。
これが普段の狩りだったら準備不足を非難するべきかもしれないが、装備すら軽装だったし、使う予定がないのにわざわざ持ち歩くような物でもないし、無理もないだろう。
門前から見える位置だし警備の兵たちがそのうち来ていただろうが、話を聞くついでだ。
もっとも……死体を集めるのは彼らだし、焼却するのはエレナで俺は何もしないんだけどな。
「援護……助かりました。死体まで焼いてもらって……」
「大した手間でもありませんし、構いませんよ。貴方たちも急な戦闘によく対応しましたね」
「上手く先制出来ましたし、二体離脱しましたから大したことありませんよ。……逃げた二体は?」
「オレがやったよ。周りに増援の姿もないし、とりあえずこれで終わりだね」
俺の言葉に、彼らはどこか驚いた表情を見せた。
「どうかした?」
「ああ……いや、腕が立つってことは知っているんですが、セラ副長が戦っている姿を見たことがないので……」
その言葉に、今の俺の恰好を思い出したが、わざわざ教えなくてもいいだろう。
まぁ……【影の剣】のことは適当に誤魔化して、後は彼らからさっさと話を聞いてしまおうか。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




