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早いもので春の2月。
体を動かしたからか、額に汗が浮かんでいるのがわかる。
そろそろこのケープも暑くなってくる頃だが、森の中だとメイド服は目立たないからな……。
「セラ嬢、そっちは片付いたかい?」
「うん。そっちも終わったみたいだね。怪我人は?」
「ゼロだ。あいつらも大分慣れてきたな」
見ると3人が警戒しもう3人が死体を積んでいる。
この合同訓練。
何気にベテラン達からの評判が良かった。
他国は知らないが、この国だと身内か同郷ならともかく、わざわざ見知らぬ新人を鍛える事は無い。
まずは新人同士で組んでそこそこ育ってから、どこかのクランや戦士団に入ったり、名を売ってその都度別の相手と組んだりだ。
そういった慣習もあって最初は懐疑的だったが、新人達のグループが1周する頃にはその評価が変わって来た。
1から育てたら効率がいいって事に気付いたんだろう。
当初は1巡したら指導係は外れる予定だったが、どうにも人気で未だ継続している。
当初は薬草採取がメインで合同訓練は建前だったのに、すっかり入れ替わっている。
これなら俺が抜けても問題無いだろう。
◇
「お待たせー」
屋敷に戻り、仕事の報告をする前に【隠れ家】でシャワーを浴びてきた。
それ程汚れたわけでは無いが、森に入るとそれだけで土や木の臭いが移る気がするからな……。
「構わないわ。今日も問題は起こらなかったようね」
「うん。もう皆慣れて来てるし、指導係もいるしね。ここ数日のオレは離れた所にいる魔物を倒すだけだよ」
セリアーナが今日の合同訓練の様子を訊ねてきたが、ここ数日同じことを言っているし特に答えることは無い。
聞き方からして彼女もそれをわかっているんだろう。
「薬師達の訴えを聞いただけだったのにね……リーゼルも驚いていたわ。でもそれならもうお前抜きでも大丈夫そうね。間に合ってよかったわ……いくら自分で選んだとは言えバタバタ死なれるのは気分が悪いものね。お前は明日からは参加しなくていいわ」
「はいよ。出発はもうすぐなの?」
「明後日の予定だよ。一旦領都に寄るからここでは荷物は積まなくていいからね。はい、動かないようにね」
ソファーに座ると隣に座っているエレナが代わりに答えた。
明後日か……。
ロブの所の注文はもう仕上がっているはずだし、引き取りに行っておくかな。
他には……。
「ぉぁぁぁ……⁉」
片づけておく用事を思い出していると、エレナの魔法で生み出した温風が頭に吹き付けてきた。
髪の毛ももう腰に届きそうな長さになっている。
このドライヤーの様な乾かし方だと見た目が愉快なことになっていると思うんだ……。
セリアーナが楽しそうな顔でこちらを見ているのがわかる。
だからあえてエレナも逆立てたりうず巻いたりと、大きく動くようにしているんだろう。
「ねー。そろそろ髪切りたいんだけどー」
「……そうね。王都に着いたら少し後ろも揃えましょうか」
「!」
いつもは前髪を切り揃える程度しか許可が出なかったが、後ろもついにか。
でも短くする様な感じじゃないな……。
「私も向こうで少し手を入れるから、その時にお前も済ませましょう」
「はーい」
いよいよ王都、結婚か……。
何だかんだリーゼルともしょっちゅう顔を合わせるからついつい忘れがちになるが、まだ結婚していないからな。
しかし明後日か。
雨季は来月半ばかそこら辺からだけれど……どうするんだろう?
式は夏の2月頭の記念祭で行われるが、仮にも第1王妃の息子で新公爵様の結婚式だ。
その日だけ行って、ハイ終わりってわけにはいかないだろう。
一旦領都に寄るそうだけれど、ここから飛ばしても4-5日はかかる。
で、領都から通常ルートで2ヶ月弱。
それだと夏の1月を回ってしまう。
一昨年王都に行く時は荷物を【隠れ家】に詰め込んで、余計な物も人も省いた状態でそのルートを1ヵ月で踏破した。
ただ、今回はリーゼルや親父さん達もいるから、それは無理だ。
山を突っ切るルートなら1ヵ月を切るが、危険が多い。
セリアーナを狙う連中もいるし、猶更だ。
何か考えはあるんだろうけど、どうするんだろう?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・13枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




