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利権やしがらみで儲け話を放棄するってのはよくあることだし、そう言った理由でなら納得出来るんだろうが、責任者になるのが面倒だから……って理由で放棄しようとしているってのは彼にとってはかなり衝撃だったようだ。
先程まではやり手っぽい雰囲気の表情をしていたのに、急にポカンと間の抜けた表情で固まっている。
「だいじょーぶ?」
俺の声と、周りの者に小声で「旦那様」と呼ばれたことでハッとしたようにこちらを見て、頭を下げた。
「……はっ、いえ。失礼しました。確かにセリアーナ様もセラ様もお忙しいでしょうし、いくらルバン様の要請とはいえ即決は出来ないでしょう」
そう言って納得するように頷いている。
だが……別にルバンから要請はされていないんだよな。
例の彼のことは商業ギルド内にも知られているようだし、当然昨日領都に来てすぐにアレクの下に向かったってことも知られているだろう。
それなら、ルバンがセリアーナの下に協力要請をするために送り込んだって思われてもおかしくはないんだが……どうしたもんか。
何て返したらいいか迷っていると、「……セラ様?」と様子を窺うような声で訪ねてきた。
俺がすぐに返さなかったことで、何か失言をしたとでも思ったのかもしれない。
「いや……何でもないよ。まぁ……そこら辺をどうしようかってことだね」
その言葉に、彼らは「なるほど……」と頷いている。
要は何も決まっていないってことだが、それでも彼は何かしら納得出来ることでもあったのか、呼び止めたことを詫びながら去っていった。
何か余計なことを喋ったりはしていないはずだが……。
「……まぁ、何かあれば上に任せちゃえばいいか」
商業ギルドはリーゼルの管轄だし、今の出来事を伝えておけば後は彼がどうにかするだろう。
その為にも、これ以上呼び止められないうちにさっさと執務室に向かおう。
俺はすれ違い挨拶をして来る者たちに適当に返しながら、執務室に飛んで行った。
◇
「お疲れ様。旦那様は中にいるね?」
執務室の前にやってきた俺は、ドアの前の警備の兵に声をかけた。
わざわざ訊ねなくても、廊下の前に待機している見知らぬ護衛らしき者たちの姿から、リーゼルが中でお偉いさんと話をしていることはわかるんだが……礼儀だな。
そのことがわかっている兵たちも苦笑しながら頷くと、すぐに中に連絡に向かってくれた。
そして、待たされるようなことはなく執務室に入ると、リーゼルの姿を探す。
「えーと……?」
「セラ君、こっちだよ」
ドアの前でキョロキョロしていると、応対をするために文官の一人が席を立とうとしたが、それより先に奥の応接スペースから声がした。
それなら……とそちらに向かうと、やはり偉そうなおっさんと対談中だった。
廊下で待機していた護衛たちはこのおっさんのだな?
「お邪魔しますよー……お話し中みたいだけどいいのかな? 向こうで皆で集まって話してるかと思ったから入って来たんだけど、良かったのかな?」
何となく見覚えはあるが……少なくとも俺が今までまともに話したことがない相手のはずだ。
リーゼルに呼ばれたからとはいえ、思い切り話の腰を折ってしまったが……いいんだろうか?
「構わないよ。そうだろう?」
「ええ。恐らくセラ様も私と同じ用件でしょうし、私は後回しで構いません」
彼はリーゼルの言葉にそう返すが……そうとしか言えないよな。
「まぁ……それじゃー、パパっと済ませちゃうよ」
俺は小さく咳ばらいをすると、昨晩と先程セリアーナと話した内容を彼らに伝えることにした。
ミュラー家やゼルキス領に声をかけることは可能だが、責任者になる俺が面倒だからあまりやりたくない。
実際にどう動くかはまだ決めかねているし、ウチがどう動くつもりなのかを知っておきたい……こんな感じだな。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




