2039
「心なしか……ここ最近だと人が多い方なのかな?」
南館の一階に下りた俺は、本館に入る前に廊下から様子を窺っている。
今までも時折屋敷を訪れる者の数が増えることはあったが、商業ギルドだったり領都に屋敷を構える貴族の使いだったり……そこまで身分が高い者が来ることはなかった。
だが……。
俺は【妖精の瞳】とヘビの目を発動して、屋敷全体を見るようにキョロキョロと視線を這わせる。
「見た感じ護衛の数も多いし……お偉いさんが直接来てるみたいだね」
訪問者に同行している者の中に普通の使いには付けないような腕利きがいるし、それはまず間違いないだろう。
「一応様子見って判断はしているけれど、それでも重要視しているってことだね?」
セリアーナの部屋の使用人たちから聞いた限りだと、商業ギルドはルバンの村の拡大事業はまだ様子見で、積極的に関わろうとはしていないらしい。
ただ、それでも全く無視するつもりはないようだし、領主の判断を聞きに来たってことだろう。
……流石にこの状況で他の商会を出し抜こうとか、抜け駆けしようとかは考えないはずだしな。
とりあえず、俺……というよりは、セリアーナ側の人間がここで呑気に姿を見せても、色々聞かれたり面倒なことになりそうだ。
執務室に向かうのは、彼らの姿が見えなくなってからにするか……と考えていたんだが。
「む……気付かれたか」
見つからないようにと天井近くから様子を窺っていたんだが、ある一行の護衛の一人が俺に気付いて主に教えている。
執務室に向かおうとしていたのか、それとも既に用を終えたのかはわからないが、その彼ら一行がこちらに向かってきた。
仕方がない。
逃げるのは論外だし、このまま浮かんでいても変に思われるだけだし……下りるか。
小さく溜め息を一つ吐くと、俺は【浮き玉】の高度を下げて廊下に姿を見せた。
◇
「お早うございます。セラ様」
一行の偉そうなおっさんがまずは挨拶をしてきた。
その中に屋敷の人間はいないし……もう用事は終えたみたいだな。
「はい、お早う。そっちは帰りかな?」
「ええ……急な訪問だったため、直接執務室に行くことは出来ませんでしたが、執務室に出入りする文官の何人かと意見交換が出来ました」
「それは良かった。ところで、南のルバンさんの村の件かな?」
俺の言葉に彼の目つきが一瞬だけ鋭くなった。
やはり彼らはその件で屋敷に来ていたようだ。
「……はい。我々も領内の普段の業務で手が一杯でして、ルバン様の支援は少々難しい……と考えております。ただ、リーゼル閣下が何か仰ればいつでも動くことは可能です」
「ふむふむ……」
まぁ……この辺は先程セリアーナの部屋で話していた際に立てた予想と概ね一緒だ。
頷く俺に特に変わった様子がないことに気付いた彼は、「それで……」と話を続けた。
「セラ様は本日はどうかされたのでしょうか? 普段はあまりこちらには姿を見せないと聞いておりますが……」
何かしら聞きたいことがあるのか、彼はジッと俺を見ている。
「……色んなところでオレの行動が噂されてるんだね」
ちなみに、俺が本館に来ているのは、執務室にいるリーゼルに会うためだ。
ルバンの村の件だが、流石に情報がなさ過ぎてセリアーナも動きようがないし、リーゼルたちがどんな方針なのかを知っておきたいからな。
執務室に伝令を送ってやり取りしてもよかったんだが、俺が直接向かった方が手っ取り早い。
しかしそのことをそのまま伝えていいものかどうか……と考えたが、目の前の彼の様子を見るとその辺りのことは予測出来ているんだろう。
「まぁ……いいよ。オレが来たのは旦那様にどうするかを確認するためだよ」
「やはり。セリアーナ様はルバン様に支援をするおつもりなのでしょうか?」
それなら自分たちも……と言いたそうだが。
「セリア様もオレもやろうと思えばゼルキス領の協力を得られるけど、そうなったらオレが責任者になりそうなんだよね」
そう続けると、何とも言いようがない表情になった。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




