2028
セリアーナの頭部と肩周りの施療を終えると、今度は腹部に移動した。
単純に胴体の施療ってだけなら、これまでも行っているように肩から全体に意識を向けるだけで十分なんだが、もうほとんど良くなっているものの今回の施療の目的は肝臓だ。
先程まではソファーの後ろから行っていたが、今は前に回り込んで大体この辺り……と見当をつけて手を当てている。
まぁ……多少位置がズレたところで問題はないんだが、それでも出来るだけピンポイントに行った方が効果が高いような気がするんだ。
セリアーナは一人用のソファーに座っているため隣に座ることが出来ないし、俺はすぐ横に浮きながら手を伸ばしている。
「……お前、それでちゃんと出来ているの?」
その俺の苦労をわかっていないセリアーナが、背中に手を乗せながら声をかけてくる。
さらに、手を乗せるどころか軽く揺らしだしてきた。
「ずれーるー」
「あら、ごめんなさい。それで……その体勢じゃないと出来ないのかしら? 言うまでもないことだけれど随分間抜けな姿よ?」
セリアーナは俺の抗議の声を無視して笑いながら揺らしている。
ちなみに今の俺は、【浮き玉】をお腹の下で抱え込むような姿勢だ。
足を伸ばすと周りの邪魔になるし、この姿勢がベストだと思う。
一しきり俺を揺すって満足したのか、セリアーナは手を止めた。
俺は「はぁ……」と溜め息を吐いてから、セリアーナの腹部に手を当てて施療を再開する。
「……どう?」
「腹部だけじゃなくて体全体に効いている気がするわね。そのまま続けて頂戴」
一応肝臓辺りを中心にかけている側からしたら、体全体に効いているって反応はどうなんだろうか……って気がしなくもないが、とりあえずセリアーナには好評のようだ。
俺は「はいはい」と返事をすると、そのまま続行した。
◇
さて、施療箇所を腹部に移してから二十分ほど経ったところで、俺は完了をセリアーナに告げた。
セリアーナに施療をするのは久しぶりだったし、もう少し続けて欲しそうな顔をしていたが、次のフィオーラが待っていることを思い出したのか、肩を竦めながら引き下がった。
フィオーラはセリアーナのその様子を見ながら「ごめんなさいね」と笑っていたが、俺が彼女の後ろに回り込むとすぐにジッと動かなくなった。
先程までのセリアーナの施療の様子を見ていたから、どんな手順で行うかがわかっているんだろう。
「私も肩回りを中心にお願いするわ」
似たような手順で行うことがあるとはいえ、そんな注文までつけて来た。
「うぐっ……!?」
フィオーラ自身が望んでいることだし、それなら……ってことで俺は遠慮なく肩周りのマッサージ付きで施療を行っている。
「セっ……セラ!?」
セリアーナも決して怠けているわけではないが、やはり彼女よりもフィオーラの方が机に向かって作業をしている時間が多いからだろう。
軽く指を押し込むだけで凝っていることがわかる。
加護を発動しながら、その凝っている箇所をゴリゴリと揉んでいた。
「セラ、大分痛がっているようだけれど……大丈夫なの?」
フィオーラの声を無視してマッサージを続けていると、自分の時よりも反応が激しいフィオーラを見て不安に思ったのか、セリアーナが声をかけて来た。
「大丈夫大丈夫。凝りがひどいだけだよ」
俺は気にせずゴリゴリと揉んでいく。
余程痛いのかフィオーラは肩を揉んでいる俺の手を軽く叩いているが……【祈り】もかかっている彼女なら、俺なんて振り払おうと思えば簡単に振り払えるわけだし、加減をする余裕があるのなら大丈夫だろう。
同じく俺たちの様子を見ているテレサはそのことがちゃんとわかっているんだろう。
相変わらず心配そうにフィオーラの様子を眺めているセリアーナに、テレサが「大丈夫ですよ」と説明をしている。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




