2021
「ジグハルトたちが対処に当たる以上は、短期間でもある程度片は付くはずだけれど……兵を派遣する期間はもっと長くなるわよね」
「それでも周辺を移動する者たちに報せないわけにはいきませんし……また訪れる客の予定がわからなくなりましたね」
先程のセリアーナのぼやきを聞いた二人は、苦笑しながらセリアーナに声をかけている。
騎士団側にとっては周辺の拠点や街道を行き来する者たちの安全を確保することが大事だし、そのためにはある程度長期間であろうと人を割くことも仕方がないことだが……この時期のセリアーナにとってはそうではない。
特に今年はまだ領都に訪れる者が確定していないし、そんな中で領内の通行に問題が出てしまいそうな問題が出てくると、さらにわからなくなってしまう。
そりゃー……セリアーナもぼやきの一つや二つは出てしまうだろう。
「まあ……一の森自体に何か異変が起きているわけではなさそうだし、領内を移動することが例年よりも危険だというわけじゃなさそうなのは幸いね」
セリアーナはそう言うと、また一つ大きく溜め息を吐いた。
使用人たちの目がないからか、セリアーナも大分気を抜いているようだ。
結局わざわざ皆で浴室に移動するほど大した内容の話はしていないんだが……このセリアーナを見られないで済んでいるし、移動して来たこと自体は間違ってなかったな。
「団長がまた北の拠点に兵を送るんだけど、その時にオレとの協力についても記しておくって言ってたし、そこまで長引いたりはしないと思うよ」
先程軽くオーギュストたちと話しただけでまだ詳細は決まっていないが、俺の一の森の北側の調査は毎日帰宅することになっている。
その前に軽く上空から見て回って、魔物が集まっている場所を拠点で待機しているジグハルトたちに伝える……って方法で大分彼らの手間を省くことが出来るはずだ。
俺の言葉に、エレナが「確かに」と同意する。
「雨季も明けているし君も動き回りやすくなるね。もっとも……その分魔物に襲われないか気を付ける必要があるけれど……あまり暗くなる前に切り上げたら問題はないかな?」
「北の森の魔物なら平気だよ。一の森の魔物だって、浅瀬なら多少不意打ちを食らっても問題無いね」
俺は自信たっぷりにエレナに頷いた。
【風の衣】と【琥珀の盾】。
どちらも普段から使い慣れているし、魔物の攻撃を受けたとしてもすぐさま再発動が可能だ。
ダンジョンの下層以降や一の森の奥にいる強力な魔物なら守りを破られる可能性もあるが、俺が見て回る場所ならこれで十分だ。
まぁ……不意を突かれようが、北の森の魔物程度なら俺がまともに攻撃をくらうこと自体まずないだろう。
「お前には手間をかけさせるかもしれないわね」
今の短い間でも頭を相当使ったんだろう。
顔を上げたセリアーナの表情に疲れが浮かんでいる。
「む? 気にしなくていいよ。一人で好きに飛び回るだけだしね」
俺がそう言うと、セリアーナは「そう?」と苦笑している。
あまり見せない態度だが……セリアーナも自分で疲れていることを自覚しているんだろうな。
とりあえず、俺は皆が入るように【祈り】を発動した。
◇
一通り報告を終えると、これ以上風呂に浸かっていてものぼせかねないしさっさと出ることにした。
そして、俺が髪を乾かしたりしている間にエレナは屋敷に戻っていった。
アレクはまだ執務室にいるようだが、彼らの報告もそこまで長引くようなこともないだろうし、すぐに解散になるはずだ。
久しぶりに領都に戻って来たんだし、今日はもう家でのんびりしてもらってもいいだろう。
そして、部屋を出ていったエレナとほぼ入れ違いでテレサが部屋にやって来た。
騎士団本部では見かけなかったし、今日は冒険者ギルドにでも行っていたんだろうが、調査隊の帰還を聞いて部屋に来たんだろう。
だが。
「……お疲れのようですね」
俺を膝枕したまま【祈り】と【ミラの祝福】の施療を受けているセリアーナを見て、そう呟いた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】+1【赤の剣】【猿の腕】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




