195
この襲撃のボスであるクマ。
まだ魔物との戦闘は続いているが、それが終わるまで放置していて万が一魔物に持っていかれると大損だ。
その為本陣に待機していた予備兵がそれの回収にやってきた。
手際よくロープをかけ馬で牽き、ソリの様な物に乗せていく。
「……お疲れ」
「……おう」
運ばれていくそれを横目に気が抜けたのか棒立ちになっているアレク達に声をかけた。
自分達が全力で当たって何らダメージを与えられなかった存在を一撃で倒したジグハルト。
多分彼等も気付いたんだろう。
自分達が邪魔になっていたと。
「……かっこよかったよ?」
「……そうか」
力のないアレクの声。
だが俺の言葉も嘘ではない。
怪獣サイズの化け物に生身で挑んだあの姿。
アクション映画の主人公パーティーだって言い張ってもおかしくない位だ。
結果はアレだったけれど。
気落ちする一行を前にどうフォローするか悩んでいると、訓練場の北辺りから怒号が響いた。
「⁉」
ボスは倒したが、まだ魔物は残っているし統制も失っていない様で、こちらの気が緩んだ隙を突き押し込んできている。
ちょっとヤバいかもしれない。
なまじジグハルトの魔法を見てしまっただけに、あれに頼ろうとしてしまうかもしれないが、通常の魔物のサイズだとそのまま森に当たってしまう為、使うことは無いだろう。
「何かあっち大変そうだし、行ったら?」
何となくフォローに回っていたが、よくよく考えると俺がそんな事をする義理は無い。
何でそんな事に気を使わにゃならんのかと。
体を動かして勝手に立ち直ってもらおう。
「……そうだな。よし行くぞ!」
そう言うと大きく息を吸い込み口元に手をやり。
「援護に向かう!持ちこたえろ!」
【猛き角笛】を通し全体に聞こえるよう指示を出した。
アレク達自身にも効果があったのか、さっきまで呆けていたとは思えない勢いで駆け出していった。
さて、俺は……。
「へ……へっくしょぃ!ぉぉぉ……寒い」
ボスと接近したりジグハルトのゴン太ビームを間近で見たりとで冷や汗をかいたのかもしれない。
本陣で火に当たってくるかな。
◇
「おう、セラ!」
幸いどこからも呼び出しがかかる事無く、真っ直ぐ本陣に着き篝火に当たっていると後ろからジグハルトの声がした。
何やら楽しげだが、さっきのクマ撃ちはそんなに良かったんだろうか?
「や。相変わらず凄いね」
そちらに向くと、既に防具を外し代わりに防寒具をまとっていた。
もう彼の出番は無いって事か。
「ふ……あの程度なら他にもできる奴はいるさ。そんな事よりも、見ろよ」
ルバンやフィオーラ辺りならできそうだけれど……あれを「そんな事」扱いできるのはあんた位じゃないかな?
まぁ、その手にあるものを見ると浮かれているのがわかる。
こちらに向けて広げた手のひらには聖貨が1枚乗っかっている。
あのクマさんは、ジグハルトにとっては美味しい獲物だったんだろう。
「おめでとう……。どうだっ!」
負けじとこちらもこの戦いで得た聖貨を見せる。
孤立していた魔物を上から探して、コツコツ刈り取る事20体強。
ゲットした聖貨は4枚だ。
この魔物の群れがどれくらいなのかはもう俺でも把握できないが、今回はほぼ全滅近くまで追い込めている。
合計で相当な枚数の聖貨が得られたんじゃないか?
「……やるな」
それを見てニヤリと笑うジグハルト。
「でしょ。あのクマの分は入ってこなかったけどね」
熱い思いをしたし、チクリと一刺ししておく。
「……そう言うな。流石にあれが中まで入ってきたら死者が出てもおかしくなかったからな。多少強引にだが決めさせてもらった」
確かにあんなのとまともにぶつかればどれだけ被害が出たか。
ポーションじゃ間に合わない重傷者も出てはいるが、死者はゼロで済んでいる。
このままゼロで済ませられるんならそれが一番か。
「仕方が無い……許してあげよう。アレク達少し落ち込んでいたから、それは適当に相手してあげてね」
「……殿下が客用に良い酒用意していたよな。それを出してもらうか」
「ジグさん主催なら人集まりそうだね」
「……仕方が無いか」
大変だろうが、諦めてホスト役を頑張ってもらおう。
俺は参加しないが、きっとみんな色々聞きたがるはずだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




