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クマを上から追尾すること10数秒。
いよいよ接触という所で、アレク達が動き出した。
「はあっっ!」
確か斧を持っていたはずの1人が、何処から出したのかハンマーの様な武器に持ち替え、気合と共に地面に叩きつけた。
何故?
そう思ったが、すぐに理由がわかった。
叩きつけた場所から地面が波打つように隆起し、背後にいるので見えはしないが、恐らく顎に直撃したのだろう。
クマの頭部がかち上げられた。
「恩恵品か加護か……」
土か地面に作用するんだろう。
これなら直接ぶつかる事無く足止めが出来る。
間髪入れずに残りのメンバーが走り出している。
体勢を立て直す前に追撃を入れるんだろう。
「オラァッ!」
まずはアレクが隆起した地面を足場に飛び上がり、頭部に棍棒を叩きつけた。
クマは首が太く人の様に頭を殴られたからと言って、脳震盪を起こしにくいと何かで読んだことがあるが、【祈り】もかかっているし流石にダメージは入ったはずだ。
さらに他の仲間も槍や斧で後ろ脚を刺したり切りつけたりしている。
それ自体はダメージにはなっていないようだが、嫌がらせとしては機能している様だ。
立ち上がり前方を薙ぎ払おうと腕を振り上げている。
この巨体が立ち上がると物凄い迫力だ。
余裕を持って高度を取っているが手を伸ばせば触れる事が出来そうな……。
「あ……いけるわ」
クマの注意が前方に行き、やや前傾姿勢の為、頭は狙えないが背中はがら空き。
通じるかわからないが、この隙は逃せない。
「たっ!……ぉぅ」
【影の剣】を発動し、その隙だらけの背中に突き立てた。
と同時に、非常にまずい事も理解できた。
体格差を考えると、少しぶつかられただけでも死にかねないので、突き刺す長さは用心の為半分程度にしたのだが……。
これでも今まで色々な魔物を貫いてきた。
だからこそわかる。
内臓はおろか、筋肉にも到達していない。
こいつは俺じゃ倒せない。
下を見れば、距離を取って攻撃を躱しているが、こちらも攻撃をする事が出来ない。
少人数で当たるんじゃなくて、大人数で囲んで延々攻撃を続けるのが正解だったか……?
アレク達も互いに声を掛け合い何とか牽制を続けているが、どうにも決め手がない。
相変わらず背後は無警戒だが……いっそ頭部を狙ってみようか?
いや……これだけ激しく動かれていると無理だ。
やっぱ背中を……。
クマの頭上5メートル程の所を漂い、そんな事を考えていた時だ。
正面遠くの、丁度本陣がある辺りが篝火ではなく、何かが一瞬だが強い光を放った。
光が見えたら上に退避。
以前ジグハルトに一緒に行動する時に気を付けることを聞いた際、そんな事を笑いながら言っていたことが頭に浮かび、慌てて上昇した。
数メートル程さらに上昇したところで、再び先程の場所に光が灯った。
今度は合図の為の閃光じゃなく、ジグハルトの攻撃魔法だ。
そう認識した瞬間、ぶっ放されたそれが俺の足元数メートル下を貫いていった。
「あっっつぁ⁉」
通過していった魔法を追って後ろを見ると、徐々に細くなりやがて消えたが、1の山近くまで軌跡があった。
今までも何度か間近でジグハルトの魔法を見た事はあるし、すぐ側を通過していったこともある。
ただ、それらは多少熱を感じる事はあっても、精々その程度で、皮膚を焼くような熱さを感じたことは無かった。
まして今は厚着をしている。
「はっ⁉」
驚きすぎて気を取られてしまったが、そう言えばクマと戦っている最中だった。
今の魔法はクマを狙ったんだろうが、どうな……。
「……マジか」
再度振り返ると、力が抜けたようにゆっくりと倒れ落ちていくクマの姿が見えた。
「一撃かぁ……」
さらによく見ると、頭部が切り離されている。
胴体にも大きな痕は無いし、首を穿ったんだろう。
どんな精度と威力だったんだ……?
周りの冒険者達もそれが目に入ったようで戦闘中であろうに歓声を上げている。
本陣の方を見ると、何かポーズをとっているジグハルトの姿が篝火に照らされていた。
斜め上に魔法は発動していたし、森にかからないように櫓から降りて地上から撃ったんだろう。
もしかして俺達って狙撃の邪魔だったんだろうか……?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




