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リーゼルがセリアーナへの返事を書くまでソファーで待っていてくれと言われたので、大人しく待っているのだが、お茶とお茶菓子が出てきた。
ロゼが後ろに控えているし、お客様扱いだ。
そして気になるのは、未だドアのすぐ側で立っている2人。
流石にジロジロ見るような真似はしないが、ここからだと横顔だが見る事が出来る。
40手前くらいのやや頬のこけた男性に、そちらとどことなく似ている20代ほどの男性。
あのおっさんの方は、確かレフの街の代官だよな?
あの時は顔をあまりはっきり見る時間が無かったが、痩せたおっさんの知り合いがいない事もあって、何となく覚えている。
なら似ている片方はその息子かな?
……何でまたこんなところでリーゼルと?
和やかな空気では無いし、好ましい客って感じじゃなさそうだ。
それに今度領都に戻されるとか聞いたし、忙しいんじゃ……あっ……。
わかっちゃったかもしれない。
息子を売り込んでいたとか言ってたし、多分これもそうだ。
……何で今頃?
もうすぐ冬だけれど、通過したの夏前だよな?
「セラ君」
「ひっ⁉」
訝しみながらチラチラ横目で見ていると、唐突にリーゼルに名を呼ばれた。
彼を見ると顔を上げこちらを見ている。
「マーカスという名前に聞き覚えはあるかい?」
……マーカス?
思い当たる相手はいないな。
「いや……聞いた事無いです」
「はははっ!そうだよね」
楽しげに笑ったかと思うと、また机に向かい書き物を始めた。
「あちらの若い男性の事ですよ」
後ろからロゼが小声で耳打ちして来た。
……親父さんの方は変わりがないが、そのマーカスの方は顔こそ変化ないが、拳を強く握りしめている。
怒らせてしまったかな?
でもなー……同じ街ならともかく1日立ち寄っただけの街の代官の息子の名前とか知らなくてもしょうがないよ。
他の街の人間なんてよっぽど腕の立つ冒険者とかでも無いと、耳にする機会は無いんだ。
「セラ君、これをセリアに頼むよ」
微妙な気まずさを感じていると、返事を書き終えたのかカロスを経由しそれが俺に渡って来た。
これまた同じく封がしっかりしてある。
……俺は何をやらされているんだろう?
「わかりましたー」
よくわからないが、とっとと退散だ!
◇
「たでーま!」
「お帰りなさい。返事は貰って来た?」
「はい。殿下の部屋にレフの代官親子が来ていたよ?」
リーゼルからの封書を渡し、ついでに先程の事を伝える。
まぁ、いくら何でも飛び込みで来るような事はしないだろうし、遅くても昨日までには連絡が来ているだろうからセリアーナも知っているとは思うが、念の為だ。
「知っているわ。覚えているかしら?来る途中立ち寄った時に売り込みをかけて来たことを。今回直接子供……と言っても私よりも年上だけれど、その長男を紹介しに来たの」
セリアーナは封書を開きながら話し始めた。
「リーゼルが王都に行っていたからとはいえ、時間をかけ過ぎね。せめて雨季前に来るべきだったわ」
ちょっと見込みは無さそうだな。
「半年経ってるもんね。でも殿下が戻って来てからも雨季に備えたりとかで色々忙しかったし、向こうもそれがわかってたんじゃない?」
何で俺がフォロー入れているんだろう?
中間管理職的な悲哀を見てしまったからかな……?
「決断の遅さが代官交代の要因の1つなの……。レフの様な比較的手前にあるならともかく、この街で仕事に就く者にグズはいらないわ。死ぬのが本人だけなら別に構わないけれど、その場合私の民も死ぬものね」
セリアーナのものなのか……。
それはそれとして、この辺りだと緊急事態と言えば大抵魔物絡みだ。
言葉は通じないし、即行動する必要がある。
「まぁ……魔物が突っ込んできているのに、のんびりされても困るか」
それを聞いたセリアーナが、その通りといった顔で頷いている。
「武に秀で勇ましく決断力に富み必ずや力に、そう評価を書いてあったけれど、これじゃ駄目ね」
手の動きだけで何かにバツと大きく書いたのがわかった。
残念マーカス。
「そういえば、セラ。お前マーカスって名前に聞き覚えはあって?」
「息子さんの事でしょ?ロゼが教えてくれたよ?」
「そう」
フフッと笑うといつもの悪そうな顔をしている。
リーゼルもだが、何故俺に聞くんだろう?
……もしかして俺が知っていたら採用、とかそんなギャンブルじみたことしてないよな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




