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「わかった蛇だな。代金は金貨2枚だ」
……いいお値段じゃないか。
とは言え前世でも職人お手製の革製品とか高かったしな。
ブランド品なんてさらに桁が1つ増えてもおかしくなかった。
質はいいし、そう思えば悪くは無いか。
「はい。そういえば、これは何の皮で出来てるんです?」
財布から金貨を出しつつ、ついでに素材を聞いてみた。
前世だと牛や馬が一般的だったが、こっちだとまた違うからな。
「シカの魔物だな。ダンジョン産の魔物は柔らかいがこいつは野生だからな。多少乱暴に扱っても簡単に穴が空いたりはしないぞ」
シカか……前世で使っていた手袋が確か鹿革だったな。
「へー……」
魔物の強さもだけれど素材としてもダンジョンと外じゃ違いが出るのか。
地上まで運ぶ手間はあるけれど、ダンジョンだとある程度まとまって量を確保できるから、武具に使われるのはダンジョン産が多いと聞いた。
でも、今聞いた通りなら外の魔物を素材に使った武具の方が性能は上なのかもしれない。
「さて……完成まで2日貰おうか。それで引き渡しはどうする?取りに来るかこちらから届けるか……。お前さん達はお嬢様の所の者だろう?」
「そうだな、届けてもらおう。セラの名前を出せば入れるようにしておくよ」
「そうか。なら取り掛かるとしよう。用が済んだのなら出て行ってくれ」
そう言うとこちらに用は無いとばかりに、返事を待たずに奥に引っ込んで行った。
道具でも取って来るのかな?
「……帰るか」
「うん」
少々呆気に取られてしまったが、うん……まぁ、職人ってこんなもんかな?
ある意味期待を裏切らない感じだ。
素材の事とかもう少し聞きたいこともあったが、後は自分で調べてみるかな。
◇
「あの人がロブさんだよね?作ってる物はどれも良さそうだったけれど、客はいないって言ってたし、あの人何なん?」
帰り道、アレクに気になった事を聞いてみた。
繁盛している気配は無いけれど、金に困っているって感じもしなかった。
かと言って何か後ろ暗い事をしている風でも無いし。
「俺も詳しくは無いが、元は若い頃から冒険者ギルドで魔物の処理をしていたんだ。この街も今と違って職人の数も少なかったから、解体から皮を鞣したりと、何でもやっていたらしい。ある程度街が落ちついて来ると、ギルドで働きながら若手の指導に回っていたそうだ」
「ほうほう」
「その過程で革細工の技術も身に付けたとかで、武具の制作や修復を請け負ったりもしていたんだが、数年前にギルドを辞めあの店を開いたんだ。今でも定期的にギルドで指導を行っているがな。教官みたいなもんだ。その伝手で素材を安く回してもらったりもしているんだとさ」
……充分詳しいな。
どこでこんなネタを拾ってくるんだろう?
「あのじーさん、細工の方が得意らしいが武具職人としても腕は悪くないからな。今でも大量に依頼が入った時には駆り出される事もあるらしい。特に最近は冒険者も増えたしな」
「なるほど……」
クランやパーティーで武具のメンテナンスをするなら一気にやった方が効率がいい。
「ラギュオラの牙」がそうだった。
下請けみたいなものかな?
腕のいい職人はギルド関連の仕事は報酬がしっかりしているからな。
娯楽の少ないこの街じゃお金を使う事はそんなに無いだろうし、指導者と下請けの報酬があればあの店を維持できるかもしれない。
……道楽か。
「冒険者ギルドや商業ギルドでそういった浮いた職人の事は聞いていたから、機会があれば見ておきたかったんだ。何かあった時に仕事を依頼する事もあり得るしな」
大きい工房はこの街にもいくつかあるが、個人の方が小回りは効く。
今ならともかく、今後領主になった時に何か内密に済ませたいことがある時は、そう言った個人の方が都合がいい。
今回はそれの下見に丁度良かったんだろう。
何かダシに使われたような気がするが……。
「何か食っていくか?俺が一緒ならどこでも行けるぞ?」
「くっ……!」
蹴りをかまそうとしたタイミングでの申し出……。
仕方が無い。
ここは折れよう!
「あっちの酒場に行ってみたい!」
「⁉」
まぁでも、ちょっとは困らせてやろう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




