184
魔物が戻り始めているルトルの街周辺の森のほんの手前。
「ひぃぃぃ……」
その上空で相も変わらず寒さに震える俺。
1の山はもちろん北の方にも山があって、その影響もあってこの辺は特に風が強い。
絶対に戦わないと決め、下はタイツに毛糸の靴下、そしてブーツ。
上は手には手袋、厚手のジャケットにケープ。
止めにマフラーに腹巻も完備しているが、それでも寒い。
「なんもいねーなー……」
いや、厳密にはいる事はいる。
ただ、離れすぎていて小さい光点が微かに見える程度だ。
それだって、アカメの目が無ければ木々に遮られて見えないはず。
今日の依頼は、冒険者ギルドルトル支部・支部長直々からのものだ。
そう言うと大事に思えるが、雨から逃れていた魔物を追って、大物が街に近づいていないかの調査ってだけだ。
空振りに終わるかもしれないと事前に言われたが、もちろん気を抜く事は出来ないので、アレクも調査用の少数精鋭パーティーを組んだ。
それが、アレク、ジグハルト、そして俺の3人だ。
俺が上空からひたすら監視し、ジグハルトは、空を飛べる魔物が無防備な俺を襲わないかを地上から監視し、アレクは森の浅い所に入り、痕跡探し。
各々の役割を限定したシンプルなパーティーで、街を中心に北からスタートして、森の縁ギリギリを半円状に調査を行っている。
多分距離にして20キロ近く移動することになるが……。
「ぬぁっ⁉」
ぶっとい光線が10メートルほど離れた場所を通過していった。
そして何か消し炭の様な物が落ちて行く。
何かはわからないが、何かが俺を狙っていたんだろう。
どうしても下に集中しているから、横や、まして上になんて注意を割けないため、ちょこちょこ襲って来ている。
そして気づいた時にはさっきの様に消し炭になっている。
面白いもので、地上で戦闘を行っていると、何かヤバいものを感じるのか近づいて来ないのだが……。
今の様に何も起こっていない場所でただ浮いているだけだと、超高速でカッ飛んでくる。
流石魔境。
鳥型の魔物か普通の鳥かはわからんが、飛行速度も尋常じゃない。
ダンジョンと違って天井が無いから空中も安全とは言えない事がわかったのは収穫だな。
下を見るとジグハルトがこちらに向かって手を振っている。
問題無しと、俺も手を振り返し伝える。
しっかし……獣はちょこちょこ目にするが、魔物の姿は無い。
離れた所には居るのがわかるが、近寄って来ようともしないし、大物も全く目につかない。
まぁ、毎度毎度やってくるわけじゃ無いそうだし今年はやって来ないのかもしれないな。
「ん?」
森から出てきたアレクがジグハルトと合流しこちらに手招きしている。
何だろう?
「どしたの?」
「ちょうどキリのいいところまで来たし、一旦街に戻って食事にしよう。1の森はそれからだ」
「了解!」
◇
「ただいまー」
毎度の事ではあるが、冒険者ギルドへの報告は2人に任せ、俺だけ一足先に帰還した。
もう随分日が傾いている。
合間合間に休憩を挟んだとはいえ、朝からずっとだったからくたびれた。
ダンジョンや森の探索だといつも1時間程度で帰還しているが、これだけ長時間出ずっぱりってのは滅多に無いからな……。
窓から入り部屋を見ると……。
「あれ?フィオさんは来てないの?」
部屋にはセリアーナとエレナの2人。
俺が外に出ているから念の為護衛として部屋に来ていたはずだけど、帰ったのかな?
「ええ。作りたい物があるとかで街の道具屋に買いに出ているわ。そのまま帰宅していいと伝えてあるから、体が冷えたのなら奥の方を使いなさい」
「はーい」
そのまま寝室に向かい【隠れ家】を発動し風呂場へ直行した。
セリアーナ用の風呂も広いし悪くは無いけれど、やはり使い慣れている【隠れ家】の方が落ち着くな。
洗濯も出来るし便利でもある。
あっちでは脱いだら屋敷の使用人が洗ってくれるが、まぁ、自分の分位はね?
洗濯を終え暖かいものを飲んでいると湯が貯まったようで、【隠れ家】内にメロディーが響いた。
一応「祈り」で防げるような気はするが、手足の指先等がしもやけにならないように、しっかり湯に浸かって温まろう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




