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雨季も半分を過ぎたある日の事だ。
噂を集めたり噂を撒いたりする日々だったが、リーゼルからセリアーナと一緒に部屋に呼ばれた。
セリアーナに用があるなら俺まで呼ぶことは無いだろうし、かといって俺に用なら直接呼ぶことは無くても、セリアーナ経由で呼び出せばいいし……。
「なんだろうね?」
「そうね?」
2人呼ぶって事は両方に用があるんだろうけど、何なんだろうか?
「リーゼル。入るわよ」
一応ノックこそしたものの、返事を待たずに入るセリアーナ。
その後ろに浮きながらついて行く俺。
「やあ、セリア、セラ君。呼び立てて悪かったね」
勝手に入った事を全く気にせず、椅子から立ち上がりにこやかに出迎えるリーゼル。
相変わらず爽やかなにーちゃんだ。
部屋の中には執事のカロスと侍女のロゼ。
後1人知らないおっさんがいる。
目が合うと会釈してきたが、誰だ?
「セラ君は初対面か。オーギュスト・デューヴァ。母上の実家が治めている領地の騎士団で一隊の長を務めていた」
隊長さんか。
……それが何の用だろう。
「ここの騎士団の団長になる予定の男よ。彼がいて外の地図を広げているって事は魔物の事でも聞きたいの?」
「その通り!冒険者ギルドからも報告は上がっているが……その恩恵品はもっと詳しくわかるんだろう?」
そう言い、こちらを指差した。
なるほど……代官のお仕事か。
どうしたもんかとセリアーナを見ると頷いて来た。
「聞きたい内容にもよるけれど、ギルドよりオレの方がもう少し詳しいかもね。何を聞きたいの?」
「まあ、まずは座ろうか。お酒……は無理か。ロゼ、何か適当に用意してくれ」
そう言うと、応接スペースに移動した。
この部屋は初めて入ったけれど、セリアーナの部屋の様に寝室とは繋がっておらず、その分広くなっている。
ドアの正面奥にリーゼルの執務机。
右側に応接用のソファーやテーブルが2セット。
反対側には資料棚がずらりと並んでいる。
「お前が遊びに来ても面白いものは無いわよ?」
「そうだね……」
部屋の様子を伺っているのがわかったのかセリアーナから突っ込みが入った。
まぁ、遊びには来ないがあまり興味を惹かれるものは無いな。
◇
「さて、それじゃあ始めようか」
皆が席に着いたところで、リーゼルが口を開いた。
上座の1人掛けにリーゼルが座り、後ろにカロスが控えている。
側面にセリアーナと俺が、その対面にオーギュストだ。
テーブルにはセリアーナも持っていた街周辺や森の簡単な地図が置かれている。
「では自分が。セラ殿の恩恵品は障害物を透過して、生物の強さを見極める事が出来ると聞いた。今進めている拠点候補地までの道で、倒していない魔物の中で周辺の魔物より特に強いものはいただろうか?」
オーギュストが地図を示しながら話し始めた。
【妖精の瞳】の効果だけど、アカメの能力とごっちゃになっているな……誰に聞いたんだろう?
セリアーナも訂正しないし、このままでいいのかな?
「特別強いのはいなかったね。どれも1の森で出てくるのと同じ位だったよ。ただ、距離があり過ぎて強さはわからなかったけれど、こっちの山の麓辺りに様子見していたのがいたね」
同じく地図を指しながら説明する。
どれもジグハルトが一瞬で倒していたが、強さ自体は1の森に生息するのと大差は無かった。
1の森と1の山との関係の様に、山に生息する魔物の方が強かったりするのかもしれないな。
もっと奥の方まで行くと話は変わるのかもしれないが、この街の兵士や冒険者なら油断さえしなければあの辺りは問題無い。
話を聞くに、冬の間に伐採を進め候補地までの道を作り、春からは拠点造りの為に資材を運ぶことになる。
その際の護衛として、街の兵を動員するのでそれに向けて冬の間訓練をするらしい。
騎士団団長になればともかく、今はまだ違うし冒険者には訓練を強いる事が出来ない以上、兵士をしっかり鍛えておきたいんだろうね。
事前に聞いていればもう少し真面目に調べていたんだけど……。
ま……まぁ、何とかなるかな?
「1の森の事は僕もある程度は聞いているが、あのレベルのがそこら中にいるのか……。北と南の拠点と連携して、少しずつ進めていくしかないか……」
「そうね。無理に急いで半端な物を作って、結果潰れるような事態はごめんだわ。今も陛下からの支援もあるし、来年以降はさらに増えるのでしょう?」
「そうだね。幸い僕らはまだまだ若いし時間はたっぷりある」
そう言い2人は笑っている。
2人とも16歳だったかな?
この国の平均寿命は知らないが、焦って自滅とかはしないでくれそうだ。
頼もしい。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




