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領都を発って10日目。
天候にも恵まれハプニングも無く予定通り到着できそうだ。
しかし、多少前後はするだろうけれど、大体1日平均50キロ以上進んでいたんじゃないだろうか?
もちろん一直線に進んだわけでは無いけれど、どんだけ広いんだって話だ。
王都から戻って来る時にも思ったけれど、とにかくこの東部は広すぎる。
せめて移動手段や通信手段がもっと発達していればまだどうにかなっただろうけど……、従魔やそれこそ普通に鳥を使った通信手段はあるらしいが、普通に空飛ぶ魔物がいたからそれも無理だ。
今まで開拓に注ぎ込んだ労力が無駄になるかもしれないが、穏便に切り捨てられるのならそりゃそうするよな。
「この小川を越えたから……後1時間程で到着できますね」
地図を見ていたエレナが明るく言った。
「そうね……全く……この道の悪さにはうんざりね。道の悪さが開拓が進まない理由なんじゃないかしら」
日数や距離ならもっと多いのを経験しているが、とにかく道が悪い。
街道が通っているだけマシと言えばそうなんだろうが、段差は当たり前で、戦闘でもあったのか大きくえぐれている場所もあった。
流石に車中で文句を言うようなことは無かったが、セリアーナもストレスが溜まっていたんだろう。
珍しく冗談を口にしている。
と、そこへ馬車の護衛を務める騎士の1人が近づいて来た。
それに気づいたエレナが窓を開け、何かあったのか訊ねた。
「どうしました?」
「少し遅れてしまいましたが、このままルトルに向かってよろしいでしょうか?昼食はあちらでとなっております」
確かにお昼を回っている。
「ええ、それで構わないわ。このまま向かって頂戴」
「はっ!ありがとうございます」
失礼しますと一言いい、また列に戻って行った。
彼等とももうすぐお別れだ。
あと少し頑張ってもらおう!
◇
ルトルの街。
生まれは知らないが、俺が育った街だ。
と言っても、街の名前すら知らなかったし、教会や孤児院のある区画と繁華街の一部くらいしか行った事が無かった。
街の反対側にお偉いさんが住んでいて、あっち側に商人達がいて、そっち側に冒険者達の店があって、街の外には森が広がっている。
俺が持っているこの街の情報はその程度だ。
この街の当初の目的は、開拓の最前線が領都から大分東に離れた為、その中継拠点としての役割を担う事だった。
その為、他よりずっと広く造られている。
さらに頑丈な街壁で囲まれている。
ところが、じーさんが先走り過ぎたという事もあり、何とか拠点の役割こそはたしているものの、まだまだ開発は追いついていない。
それが領都でのルトルの評価だった。
脱走した時は馬車の荷台の更に【隠れ家】の中だったが、今は堂々と馬車で進んでいる。
正直俺のルトルの印象は領都での評価を抜きにしても、心情的にも治安的にもあまり良くないものだったが……。
鐘の音は孤児院でも聞こえていたが、初めて見る3階程度の高さの時計塔があれば、広場に無駄に噴水なんかもある。
そう言えば水だけは困った事無かったな。
荷馬車などはよく見るだろうが、今俺達が乗っているような貴族用の馬車は珍しいのか、人が集まっているが、着ている物も豪華では無いが、ボロじゃない。
中々ちゃんとした街じゃないか。
まぁ?
領都はおろか王都での生活経験もある俺に言わせてもらえば、ド田舎だけどな!
「初めて来たけれど、領都にあった資料より開発が進んでいるのね」
「本当ですね。殿下の影響でしょうか?」
セリアーナとエレナも道に敷かれた石畳や、それなりに整然とした街並みを見て、資料や聞いた話から持っていたこの街の印象が変わったようだ。
もちろん通っている場所が、大通りに中央広場と比較的お上品な場所だからってのもあるかもしれないが……。
珍しげに街の様子を見ていると、馬車は上り坂にさしかかった。
その先には低いものの壁で囲まれた広い敷地がある。
行ったことは無いが話だけは聞いていた、この街の代官屋敷。
これから俺達が当分暮らす場所だ。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




