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「む?」
軽くだがペチペチと頬を叩かれ、顔を上げた。
「気づいた?お茶の用意が出来たけれど、寝る?」
エレナが顔を覗き込みながら言って来た。
いつの間にかウトウトしていたらしい。
春の雨季に入り、毎日バケツをひっくり返したような雨が降っている。
晴れてさえいれば過ごしやすい季節だが、連日の雨でやや肌寒く、俺は天狼の毛布にくるまっているのだが、これが実に眠気を……。
「もらうー」
部屋にお茶とバターの香りが漂っている。
いつの間に……!
「セラ、この時期ルトルはどうなの?」
セリアーナは外を見ていたが、雨季のルトルはどうなのか気になったのだろう。
様子を聞いて来た。
といっても、雨が降っている時は外に出る事はほとんど無かったしあまり語れるほど俺も詳しくない。
「雨は同じくらいかな?よく降ってたよ。街から出た事が無かったから実際に見たことは無いけれど、近くの川が溢れたりとかも聞いたね。それと、雨が止んだ後は街中の水路が詰まって、水が溢れたりもしていたよ。春の方はいいけれど、秋の方だと体壊す人もいたって聞いたかな?」
「参考にならないわね」
全くだ。
「地盤は固かったし、当面の間お嬢様の住む代官屋敷も造りはしっかりしていました。流石にここよりは狭いですが、増設も進んでいますし問題は無いでしょう。ただ、まだ壁内でも舗装が追い付いていない場所が多く、雨が降ると道が荒れるでしょうね。辺境だけあって流通も滞るとも言っていました」
俺より詳しいかも知れんな……。
「そう……道の整備も必要そうね」
お茶の時間も色々考えている。
偉い人は大変だな!
是非とも暮らしやすい街にして欲しいもんだ。
◇
「ん?」
再び毛布にくるまり、今度は寝ないように気を付けながら横になり読書をしていたのだが、ノックの音がした。
「入りなさい」
ドアを開け入って来たのは、名前は知らないが確かミネアさん付きの使用人だ。
「失礼します。奥様よりこちらをお嬢様にと」
そう言うと手紙を見せた。
「セラ」
「はーい」
受け取りそれをセリアーナに渡した。
ミネアさんの部屋は反対側にあるから200メートルかもうちょっと離れているが、同じ家にいて手紙を出し合うってのも面倒だろうに……ご苦労な事だ。
「セラ、お前に部屋に来て欲しいそうよ」
読め、とばかりに手紙をこちらに見せてきた。
「どれどれ……」
要約すると、【ミラの祝福】を頼みたい。
部屋まで来てもらえないか?
だ。
これだけなら大したことでは無いが、問題は相手がフローラさんであること。
ここの第2夫人で、俺より1歳下の娘さんがいる。
挨拶はどちらともしたことは無い。
「……どうなん?」
そもそも俺はセリアーナが家族と話をしている場面に立ち会うこと自体滅多に無いからな。
悪くは無いんだろうけれど、家族仲がどの程度良好なのかがわからない。
まして、第2夫人ともなると……。
「私は構わないわ。お前が良いのなら行ってきなさい」
思ってたんと違うな。
「奥様方の仲は良好だよ」
戸惑いが顔に出ていたのか、それを見たエレナが安心させるように言ってくる。
「……また何か本の影響?物語と現実は違うのよ?」
……ファンタジー世界の人間に物語と現実は違うと叱られてしまった。
未だにこの世界の事はよくわからないよ。
「まあ……この国の貴族ならそんな事はありませんが、平民や他所の国ならそういった事もありますから」
「ほうほう」
西部出身のアレクは少し違う意見の様だ。
「そう聞くわね。全く……揉めるようなら1人で済ませればいいのに……」
それを聞いたセリアーナは少し面白くなさそうだ。
貞操観念からくる発言じゃ無いんだよな……。
何なんだろうね?
この国の貴族の使命感は。
まぁ、いいか。
このままだとまた眠りそうだし、問題無いのなら行ってみよう。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




