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「はっ……はぁ……はぁ……」
大剣を地面に刺し、それにもたれかかり荒い息をつくアレク。
上層に繋がる通路でここには魔物は現れない。
息が整うまで一旦休憩だ。
「いやぁ~……駆け抜けたね」
浅瀬から上層まで、ナビ有りとはいえほぼノンストップで駆け抜けてた。
道中出てきたゴブリンの群れはアレクが大剣を振り回し、一気に切り伏せていった。
多分普段の俺も似たような動きをしているんだろうけど、迫力が段違いだ。
剣を一振りする度に体のどこかが千切れながら飛んで行ったからな……。
【祈り】の補助効果があるとはいえ、マンガの主人公か何かなのかな?
こいつ。
そしてそのスプラッタな死体の核を、エレナが駆け抜ける様に潰していった。
「15分位かな?」
タイマーを引っ張り出し時間を確認するが、俺が普段【浮き玉】で通過するのとそこまで差が無い。
中々の好タイムだ。
「ご苦労様。まあ、悪くは無いわね」
上から指示を出していたセリアーナが下に降り、代わりに膝に乗せていた俺を【浮き玉】に乗せた。
「そのままで」
姿勢を正そうとしたアレクを制し、話を始めた。
「ここはコボルトとオークが出るわね?コボルトは、アレクが前に出て盾で受けなさい。私が止めを刺すわ。セラは上から増援の警戒をしなさい。エレナは後方から援護を。アレクが対応できない数の時だけ魔法を使いなさい」
前3人で潜った時と同じ戦い方だ。
俺の役割をセリアーナが担っている。
それにしても、セリアーナもついに戦うのか。
訓練は見た事あるが、魔物相手に戦うのは初めて見るな。
◇
コボルトの群れがアレクの【赤の盾】を叩きつける音が響く。
が、アレクは微動だにせず余裕を持って受け止めている。
そしてセリアーナがその陰から回り込む様に抜け出て……。
「はあっ!」
横からコボルトの頭部を一突きし、核を潰す。
更にもう1体を突いたところで、アレクから意識が移る前にまた後ろに下がる。
全く危なげが無い。
いや……つえーわ……このお嬢様。
使っている武器は刃が1メートル弱で全長1.2メートル程の細身の剣だ。
ただ、一応剣ではあるが、幅が細く突きに特化している様で、セリアーナはここまで一度も切りつけたりせず、突きだけで戦っている。
かつてTVか何かで見た記憶があるが、エストックだっけ?
アレだ。
普通の武器の様だが、サクサクとコボルトの頭部を貫いている。
アカメの目で見るとわかったが、突きを放つ瞬間だけ魔力を通し剣の強度を上げている。
後ろにいる時はそうしていない事から、魔力を使う事で自分が警戒されることを避けているんだろう。
……大したもんだ。
「……出たわね」
順調にコボルトを倒し続け上層半ばに差し掛かったところで、いよいよオークが現れた。
3体いるが、少し離れた所にもいくつかオークのパーティーが存在する。
1度に相手する数こそコボルトに比べ少ないが、力は段違いでアレクも複数抱えるのは厳しいかも知れない。
崩されると増援がやって来て一気に崩壊してしまう。
「セラは引き続き周囲の警戒に。エレナ、貴方は私と共に攻撃を。いいわね?」
「私は槍で戦います。止めはお嬢様が」
エレナは【緑の牙】を槍状にし、前に出てアレクのすぐ後ろについた。
アレクが受け止めエレナがチクチク突いてセリアーナが止め。
そんな布陣だ。
後ろを振り返ったアレクがそれを確認し、大剣を背負い、代わりに腰に差していた片手剣を抜いた。
「行くぞ!」
そしてオークへ突撃をし、2人もその後を追い走り出すが……俺はどうしよう?
俺まで追っても見える範囲が狭まるし、少し後ろから見渡す方がいいか。
一応いつでも救援に入れるように、準備だけはしておこう。
「あ……」
準備はしたのだが、視線を3人に戻すと既に倒し終えている。
そしてセリアーナのスキルで察知したのだろうか?
まだ姿を現していないパーティーの方へ走り出している。
「まっ……待ってー!」
テンポ良すぎないか?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




