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「明日、ダンジョンに潜るわ。朝から行くから用意をしておいて頂戴」
「は?」
「はい」
特に目新しい事は何も無かった夜の報告会。
そんな中唐突なセリアーナの言葉に驚く俺と、反対に即答するエレナとアレク。
「えっ⁉いいの?」
思わず聞き返してしまう。
あそこ最近死者出たばかりなんだけど?
「問題無いわ」
俺一人狼狽えているが……問題無いのか。
「ルトルに行く前に少し体を動かしておきたいの。今のダンジョンには私と敵対する者は入り込んでいないし、問題無いわ」
念を押すようにもう一度言ってくる。
エレナ達を見ると何ともない様な顔をしているし、大丈夫って事なんだろう。
……ジムに行くような感覚なのかな?
偶に訓練場でエレナと剣を振っているが、あれだけじゃ足りないのか。
近場でエレナとアレクがいて、ある程度安全の確保できている場所……なるほど。
加えて俺もいるし、魔物相手なら問題は起こらない。
そして、人の出入りも把握できているみたいだし、考えてみるとダンジョンが一番か。
「君が加わってからは機会が無く行っていなかったけれど、元々一月二月に一度はお嬢様も訓練がてら潜っていたからね。それに行くのは上層まで。心配はいらないよ」
安心させるようエレナも言ってくる。
「浅瀬だと新人の邪魔になるから下に降りるが、精々上層だ。楽勝だろ?」
アレクも続ける。
浅瀬は言わずもがな、上層も基本的には少数で問題無い狩場だ。
スペースがあればそこに魔物が集まって来るって事だけ頭に入れておけば、危険は無い。
タンク役のアレクに中衛のエレナ。
セリアーナはどんな風に戦うのか知らないが、2人が足止めを引き受けてくれるなら俺が倒してもいい。
それに、隠れるにしても逃げるにしても、いざとなればどうにでもなる。
「そか。わかった」
◇
「帰りはこちらから知らせるので、その時に来てくれ。では、行きましょう」
馬車で冒険者ギルドに到着し、アレクとエレナが先に、セリアーナ、俺の順で降りた。
いつもは早朝にササっとダンジョンに行ってすぐ帰っているが、今日は10時過ぎ。
中に入る前から既に人が並んでおり、こちらを見ている。
流石に目立つね。
馬車で乗り付ける事もだし、そこから降りる面子も注目を集め、あちらこちらでザワザワ言っている。
男1に女3のハーレムパーティー。
ルバンの所と同じ編成だ。
【赤の盾】に棍棒ではなく大振りの剣を持つ、いつもより重装備のアレク。
こちらはいつも通りの軽装のエレナ。
セリアーナは、髪は降ろさず上でお団子にし、レギンスにキュロット、革製ではあるもののジャケットと剣こそ下げているが、ダンジョンというよりは乗馬の方が似合いそうなスタイル。
そして俺はメイド服。
……俺が一番ダンジョン舐めてる恰好な気がする。
アレクが御者を帰らせ、扉に手をかける。
中から声はしない。
外の様子から冒険者がいると思ったんだけれど……。
「わぉ……」
中に入ると昨日のうちにギルドにも話を持って行っていたようで、支部長を始め何度か顔を見た事のある幹部達が整列し、待機していた。
冒険者も多数いるが、整列している彼等に当てられてか、口をつぐんでいる。
何となく気まずそうで、申し訳ない。
「手続きは終えています。どうぞお気を付けて」
彼等の前まで行くと、そう伝えてきた。
一応俺も潜る時は毎回手続きをしていたが……フリーパスだ。
「いつも通りよ。問題無いわ」
セリアーナは当然の様に受け止め、カウンターを素通りしダンジョンのある地下への階段に向かい、エレナもすぐ後ろをついて行っているが、アレクはカウンターで何か話し込んでいる。
「セラ、行くわよ」
どうしたもんかと思っていたが、セリアーナは待たないようだ。
「はーい。待たなくていいの?」
「私とエレナを守るように言われているんでしょうね。いつもの事よ。今日はお前もいるからお前の事も言われているんじゃないかしら?」
「ほほぅ……」
何かあればアレクの責任か。
ナイト役も大変だな。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




