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オーガの集団を初めて殲滅に成功して以来、同じ戦法で安定して倒せるようになった。
効率だけを考えるのなら、上層の端の方でコボルトの群れを倒し続けるのがいいが……、元々盾代わりに作った傘の思わぬ使い道や、ようやく使えるようになった魔法も使える事から、ついついオーガ狩りに勤しんでしまった。
1度の探索で倒す魔物は精々20数体いくかいかないかとやや控えめだが、戦闘している感がすごく感じられる。
「という訳なんだよ!」
ダンジョンから戻り遺物の換金を待っている時、何処からともなくやって来たここの支部長に、上層辺りで狩りをした方が効率がいいんじゃないかと話しかけられたのだが、その旨を熱く語った。
「そうか……」
それを聞き、残念そうだ。
先の事件の後の会議で、冒険者ギルドの仕事ぶりに不備は無いと結論付けられたが、それでもいざ死者が出た事で、新人の育成等改良していくそうだ。
ただ、今年からやるには間が無さ過ぎた為、実行されるのは来年以降になる。
新人が増えるこの春の1月なだけに、役目を終えたとは言え何だかんだで俺には上層辺りをうろうろしておいて欲しいんだろう。
気持ちはわかるけれど、1時間浮いているだけってのもね……。
「まあ……通り掛けの時に無理ない程度に気にかけてくれや」
「はーい」
俺に命令するわけにもいかないからその辺が妥協点なんだろう。
安請け合いするような事でも無いが、これ位なら問題無い。
「〇〇番の方ー」
窓口で次の番号が呼ばれた。
番号は……俺のだ。
「お?呼ばれたからオレはこれで」
「おう」
換金査定が済んだようなので、窓口に向かう事にした。
それなりに小金持ちではあるが、やはり働きが直接現金になる瞬間はちょっと胸が躍る。
いくらになったかなー?
◇
「おはよーございまーす!」
重く厚い扉を開けデカい声を上げながら薬品臭と鉄臭さのする店内に入った。
両側に商品を並べた鍵付きの棚が並び、その先にカウンターがあるが……無人だ。
「また奥なのかな……?ちょっとー!店長ー?カシラー?大将ー?くそじじー?」
店内を進みながら呼びかけるが、反応が無い。
ここは冒険者街ではなく、商業地区にあるミュラー家御用達の職人達が所属している錬金工房付属の道具屋で、入ったことは無いが奥に工房がある。
主に貴族の屋敷の魔道具システムの設置やメンテナンスを行っているが、俺の傘を制作した店でもある。
通常の武具なら冒険者街の武具店で。
傘なら商業地区の高級道具店に任せるものだが、俺の傘は少々特殊過ぎるワンオフ品の為、メンテナンスもここに任せてある。
「大声出さんでも聞こえとるよ」
声が聞こえたのか奥の工房から作業用のエプロンを付けた店主が姿を現した。
「で?朝から来たって事はまたメンテナンスか?」
「そうそう。少し連発しすぎたからね。明日からしばらくダンジョンに潜らないしお願いしたいんだ」
背負った傘を下ろし、カウンターに置き店主に見せる。
見た目も使った感じも問題無いが、いざって時に使えないと死にはしないだろうが、俺が死ぬ程ビビる羽目になる。
週1程度で持って来て見せているが、そろそろ買ってから1月ちょっとになる。
ここらでオーバーホールを頼みたい。
「はぁん……」
気の抜けるような声を出しながら、傘を閉じたり開いたりし、クルクル回したりして見ている。
「手入れはしてあるみたいだが、糸がほつれかけていたり骨にゆがみが出来たりしているな。この程度なら問題は無いが……10日は貰うがそれでもやるかい?」
「お願い。素材とか何か必要な物はある?」
「いや、工房にある分で問題無い。バラシて貼り直してとなると……金貨2枚ってところだな」
……いいお値段じゃないか。
今日の稼ぎが飛んでしまうぞ。
「はい」
高いとは思うが、技術料なんてそんなもんだ。
大人しく財布から2枚取り出し、渡す。
「毎度。出来たら屋敷に届けるよ。しばらくダンジョンに潜らないって何かあるのか?」
「ウチのアレクシオとかが戻って来るんだ。んで、オレ達が移動する為の準備とかも始めるからね」
ルトルに向かったリーゼルの護衛としてついて行ったアレクが明日明後日あたり戻って来る。
それから俺達もあれこれ移動の準備に入るからな。
しばらく忙しくなりそうだ!
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・34枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




