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「ん?」
膝掛を掛け布団代わりにソファーに横になり本を読んでいたのだが、部屋のドアをノックする音に顔上げた。
「エレナね。開けて頂戴」
【浮き玉】に乗りドアまで行き開けると、セリアーナの言った通りエレナが立っていた。
……よく分かるな。
それとも常時スキルを発動しているらしいし、それで見ているんだろうか?
「ただいま戻りました」
見ると脱いだコートを手にしている。
馬車じゃ無くて歩きで行ったのかな?
確か貴族街からすぐ出た所に高級宿があったが、ルバン達なら泊まるとしたらそこだろう。
手が空いていたらお使いくらい俺が行ったんだけど……珍しく仕事していたからな!
「おかーえりー。もらうよ」
「ありがとう。セラ」
コートを受け取り、コート掛けのある壁際に向かう。
毛皮のコートだが、厚みも無いし軽いのに持っただけで暖かいのがわかる。
……お高いやつだ!
「お嬢様にこちらを預かっています」
「そう。貴方は内容は?」
「聞きました。私は問題無いと思います」
「そう……」
俺がコートの値段を想像している間に、真面目な話をしている。
静かにしておいた方が良さそうだな……。
「セラ」
「はい?」
ソファーの上で膝掛に潜り込んでいると、セリアーナが俺を呼んだ。
ルバン達から預かった手紙を読んでいたけれど、もう読んだのかな?
「お前も目を通しておきなさい」
手にしていた手紙をこちらに差し出してきた。
「いいの?」
「ええ。アレクには向こうで彼らが直接話すでしょうしね。こちらはこちらで話を進めておきましょう」
「はーい」
よくわからんが、手紙を読んでみよう。
◇
手紙を読み、内容は概ね把握できた。
まずはルバンパーティーの事。
市民権の手続きの面倒を省きたいとかで、籍はまだ入れていない。
新領地が発足してからそこで行うらしい。
何家かは覚えていないが、キーラの実家とはもう話が付いているそうだ。
奥さん3人かー……。
親父さんは2人でじーさんは1人。
俺の知っている人の大半は1人だし、多いと思うけれど、既に家族みたいなもんだし、上手くやれるのかな?
まぁ、それはいいとして、次だ。
彼らと付き合いのある貴族家や商会をリーゼルと面会させたいらしい。
所謂パトロン関係にあって、今まで支援をしてもらっていたから、それの見返りって事だろう。
何かモロに利権に絡みそうだし派閥も出来そうなのだが、セリアーナ曰く。
「問題無いわ。私達だけじゃ手が足りないし、使える人手が増えるのはいい事よ」
との事。
派閥が無ければ無秩序になるし、結局領主として上がりを受け取る分に変わりは無いから問題無いらしい。
で、最後。
セリアーナを狙う刺客の存在についてだ。
東部、西部問わず広く情報を集めたが、今の時点で怪しい動きをしている者は無く、その事から既に領内や開拓村に入り込んでいる可能性が高く、その為パーティーを分割して護衛に参加するそうだ。
刺客が狙ってくるタイミングはいくつか想定しているらしい。
もうクリアしているが、まずは王都からゼルキスへ帰還する道中。
そう言われてみると、山越えの時のセリアーナは少し様子が違っていた気がする。
次は、セリアーナの結婚式で王都への往復時。
どのルートを使うかは知らないが、守りを固めたセリアーナを外で狙うのは難易度が高すぎると思う。
最後に、ダンジョンが拓かれた段階で混乱を起こし、そのどさくさに紛れて、だ。
セリアーナの命も勿論狙っているが、あくまでそれは二の次で東部の最前線が安定し介入の余地を潰されることを避ける事が第一らしい。
そんなに上手くいくものなのかと思うが、実際に他国で過去数十年の間に何度か上手くいっている。
経験に裏打ちされている手段だ。
刺客達の素性は、表向きは「東部を誅する者」とかいうテロリストだが、実態は西部の有力国の選抜兵を教会を経由して送り込まれる冒険者達だ。
……俺を攫った連中とかもなのかな?
だからと言って、まだ何もしていないから待つことしかできない。
山越えの時に手を出して来ていたら、いい口実になったのにとセリアーナが悔しそうにしている……。
我慢はいるがどちらかと言うとこちらが待ち構えている状況で、セリアーナのスキルに万が一の際の【隠れ家】とあまり危険は無いのが幸いか。
あまり俺のやる事は変わらなそうだ。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・31枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




