140
オーガ……。
どうもボスがスイッチになっているような気がする。
前回もだし今回も、上にいる時に目が合ってから一気に警戒される様になった。
低い位置だと目が合おうが、周りのを倒そうがそこまで関心は無かったのに……。
特に今日は5体倒した後だったからか、ヤバかった。
やっぱり鶴翼……じゃ無くて竜翼陣を敷いて来て、試しに突っかけてみたけれど、一気に包囲に移ってきて攻撃を行う隙が無い。
幸い上昇し距離を取れば追っては来なかったけれど……。
とりあえず、ギリギリまで上に逃げずに数を減らしていくことが今後の目標だな。
いや、そもそもオーガにこだわる必要ってあるんだろうか?
混んでいるから中層まで行っているだけだし、効率がちょっと悪い気がする。
もう少しダンジョンで狩りをする冒険者が減るまで待ってみようかな。
などと考えていたら、屋敷上空だ。
まだまだ冷えるしさっさと中に入ろう。
と思ったけれど、いつもなら近づいたら開けてくれるはずの窓が開いていない。
屋敷の壁や屋根を越えて、真っ直ぐ来たから俺だと気付くはずなのに……部屋にいないのかな?
裏口から入るか。
「入るよー?」
部屋の前までやって来てドアをコンコンとノックをするが返事は無し。
出かける予定とかは聞いていないし、客でも来ているのかもしれないな。
廊下で待っていても仕方が無いし、中に入ろう。
「おらんね……」
まぁいいか。
隅にあるコート掛けにケープを掛けておけば、俺が帰って来ている事はわかるだろう。
「入りますよー?」
奥へ続くドアを、念の為ノックをしてから中に入り【隠れ家】を発動する。
◇
「あれ?戻ってたの?」
シャワーを浴び洗濯を済ませてから【隠れ家】を出て応接室に行くと、セリアーナは机に、エレナはソファーにかけ本を読んでいた。
「ええ。少しお父様に呼ばれていたの」
「ほー……」
「セラ、髪がまだ少し濡れているみたいだよ。乾かしてあげるからおいで」
エレナが読んでいた本を置き、こっちに来いと手招きをしている。
お言葉に甘えそのまま隣へ座った。
「お願ーい」
洗濯している間は頭にタオルを巻いていたけれど、ちゃんと乾いたとは言えない。
何だかんだで毎度エレナに髪を頼んでいる。
この国の女性は髪型自体は自由なのに、長さに関しては短いのはあまり歓迎されない様で、俺も毛先を切り揃える程度は良くても、短くするのは禁じられている。
王都では断念したけれど、やはりドライヤーに再チャレンジするべきだろうか……。
「ぉぁぁぁ…………ん?」
風で頭も一緒にユラユラ揺れていると、セリアーナの机の側に3人位で座れそうなソファーが置かれているのに気づいた。
「ソレはどうしたの?」
今俺とエレナが座っているソファーは部屋にある、他の物とセットになっている物だが、それは少し違っている。
入れ替えるんだろうか?
「お父様からお前によ。場所はそこでいいでしょう?」
親父さんが?
「いいけれど、何でまたオレに?」
「お父様に施療をしたのでしょう?でも……そうね」
セリアーナは読んでいた本を置き、こちらをジッと見てくる。
「腰痛だとは言っていたけれど、そんな素振りを今まで見た事が無かったわ。隠していたのだとしても、こんな物を送られる程とは思えないわね。お前、何をしたの?」
「あー……」
お金はリック経由で貰ったけれど、追加でくれたのか。
まだ数ミリ程度の長さだけれど、上手くいったからな……。
「騎士の情けというか……」
「2人とも騎士じゃないでしょう」
「それもそうだね!」
ある意味親父さんの自爆だし、気にしなくていいか。
「お嬢様口は堅い?」
「私が今まで何か漏らしたことはあって?」
少なくとも俺には何も漏らしていないな。
「無いね。……旦那様、カツラなんだよね」
「……髪の毛?」
ポカンとした顔だ。
後ろを振り返るとエレナも同じような顔をしている。
バレてなかったんだ……親父さん。
「うん。ジグさんにやったのを見て自分もって。ミネアさんにも教えてないそうだし、ちゃんと知らない振りしてあげてね」
「……そう……そうね」
セリアーナは力なくそう言ったが……教えない方が良かったかな?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・31枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




