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つい先程リーゼル達が出て行き、部屋にはいつものメンバーと、ジグハルトとフィオーラが残っている。
リーゼルが中心になって話を回していたが、特にそこに参加する様子もなかったけれど、何か用事でもあるんだろうか?
「ちょっと着替えてくるね」
話が始まったからついついそのまま聞いていたが、ダンジョンから直帰で着替えも手洗いもしていない。
2人がいるからここで【隠れ家】を発動するわけにもいかない。
「寝室を使っていいわ。フィオーラが話があるそうよ」
「む?」
フィオーラが?
「ジグの事なんだけれどね?お願いしたいの」
ジグハルトの方を見ると面倒くさそうな顔をしている。
何だろうか?
「まぁいいや。着替えてくるね」
一言断り、奥のドアから隣の部屋に向かった。
この部屋の更に奥に寝室があり、そこには流石に風呂は無いものの簡単な洗面台が付いている。
ついでに俺のメイド服の予備も何着か置いてある。
一応この屋敷には俺の個室も用意されているが、セリアーナが【隠れ家】を使いたがった事もあり、王都と同じく夜は俺もこの寝室で過ごしている。
そして就寝は【隠れ家】で、だ。
ちなみに、使用人達もだが親父さん達にもオレはセリアーナと同じベッドで寝ていると思われている。
ヌイグルミの様な扱いだ。
それで俺の扱いが変わるわけでも無いし、本人が気にしていないのならそれでいいんだろう。
って事で、着替え完了。
何の用なんだろうな?
◇
「ジグさんに【ミラの祝福】?」
そう言う事らしい。
……どういう事なんだ?
「新領地の開拓という一大事業に関わるんですもの。服装だけでなく整えられるものは全部やっておくべきよ」
「私も賛成ね。全身をやる必要は無いけれど、せめて顔だけでもやっておくべきよ」
セリアーナもその意見には賛成の様だ。
見ればエレナも頷いている。
「……アレクはいいの?」
「まだ若いでしょう?」
「……なるほど」
ジグハルトなー……。
酒は好きらしいがちゃんと節制している様で、むしろ引き締まった体をしている。
それでも流石に、顔には年相応に皴が浮いたりはしているけれど、老けている印象は受けないが……おっさんだ。
これだけの有名人だし、ルトルでも彼の名を知っている者は多いだろう。
ただ、写真の無い世界だし、顔を知っている者は知名度に反して多くないはず。
別に会ってがっかりするような見た目じゃ無いけれど、ケア出来るのならやっておいた方がいい。
そんなところかな?
そして、ジグハルトはそれ程乗り気じゃないようだが、女性陣の押しに負けたんだろう。
「そこのソファー使ってもいいかな?」
ジグハルトとフィオーラが座っているソファーを指した。
今は2人だけだが4人位はかけられる大きさだし、横になるには十分だ。
「構わないわ。今からやるの?」
「時間無いし早い方がいいでしょ。ジグさん、上脱いでそこに横になってよ」
許可出たし、さっさと片付けるか。
「セラ?顔だけでいいのよ?」
受けた事のあるフィオーラは、服を脱がせたことで胴体もやると思ったんだろう。
だが違う。
伊達に王都で小遣いを稼いでいた訳じゃ無いからな!
「いいからいいから。そのまま動かないでね。んじゃ、失礼して……」
訝しげな顔をしつつも素直にソファーに横になったジグハルト。
両腕を腹の上で組ませてから、その胸に座った。
「っ⁉おいおい……」
更に下半身の方に足を延ばし、後ろに回した両手で顔を抑える。
「いいからいいから……」
何やら声がするが、説明するよりやって見せた方が早いから、無視して進める。
「ほっ!」
服の中のタイマーを引っ張り出し、スタートだ。
「……そんなので出来るの?」
王都の施療に何度か立ち会ったセリアーナも初めて見るだろう。
まぁ、この体勢でやるのは初めてだからな。
「流石に奥様方相手にこれは出来ないからね……。でも効果は一緒だから大丈夫だよ」
さて、1時間どうやって潰そうかな……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・31枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




