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領都上空をふよふよと漂い、屋敷の敷地内に入る。
王都だとここまであからさまに高度を取って移動する事はしなかったが、流石にお膝元だけあって気兼ね無くやれる。
今は領都に人が、それも外からやって来た人が多いから余計な揉め事を避けるにはこれが一番手っ取り早い。
そのまま屋根を通り越して裏に回ると、セリアーナの応接室の窓が開いているのが見える。
スキルで俺が戻ってきたのがわかったんだろう。
「ただいまー」
一声かけてから部屋に入ると、セリアーナ、エレナ、アレクのいつもの3人に加え、リーゼルにジグハルト、フィオーラまでいた。
「おかえりなさい。少し早かったわね。傘は使えなかったの?」
予定より早く帰って来たからか首尾を聞いてくる。
まぁ、行きに気合入れて「行って来るぜ!」って言い放ったからね……。
「ばっちし。通路は無事突破できたよ。ただその後、オーガさんの底力を見せられたね……何あいつら?」
うーむ……思い返すと何とも歯がゆい。
1体1体丁寧に戦うより、ある程度思い切って突っ込んだ方がいいかもしれないけれど、1発でも攻撃を食らうと死にそうな気がする。
まぁ、肝心の傘は活躍したからいいんだけれども……。
「うぐぐ……」
「オーガな……。お前が手こずる様な相手か?ああいうデカいのは得意だろう?」
唸っているとジグハルトが口を開いた。
多分、このおっさんは一瞬で消し飛ばすんだろうな。
「1対1ならいいんだけど、数が多くてさ。ちょっと突っ込むだけじゃダメだったね」
しばらくは攻略法を考えて試す日々だな。
「ここだとオーガは中層に出るんだったね。僕の下に集まっている冒険者達は10数人程度で挑んでいたよ。セラ君は1人で大丈夫なのかい?」
人数揃えられるなら多分それが一番いいんだよ。
リーゼル君。
「オレは1回あたりの探索時間が短いから、あんまり人を集められないんだよ。我儘聞いてくれる人ばかりとは限らないからね」
あっち行って、こっち行って、盾になって、あれ拾って、これ拾って、さあ帰ろう。
どこの我儘姫かと。
上から見ているから、俺が指示を出すのが効率良いし、隙さえ突ければ大抵の魔物は一撃で倒せるから、他の人に盾を任せるのもその為だし、地面に近寄らないのもすぐに回避に移れるようにだし、一応理由はあるんだけれど、それでも親しくない相手だと揉める原因になりそうだから、そうそう組むわけにはいかない……。
「ところで、王子様達はどうしたの?ジグさん達までいるし、何事?」
婚約者とは言え、まだ結婚したわけでは無い。
一応同じ屋根の下で暮らしているし、食事などは一緒に取っている様だけれど、互いの部屋を行き来したりはしていない。
そこまでしなくても、と思うけれど、些細な事でもケチを付けられないように気を付けているんだろう。
そんな訳で、俺も彼の顔を見るのは屋敷に着いた時以来だ。
「ようやくルトルへ向かう人員が揃ったんだよ。出発は2日後さ。それで、既に向こうに行っている冒険者達との調整役にアレクシオやジグハルト達を借りたくてね。大半は彼が集めたんだろう?」
リーゼルはそう言いアレクの方を見る。
「俺が声をかけたのは王都圏が活動範囲の冒険者が多かったからな。面通し位は俺が間に入るべきだろう?」
「ほうほう」
いよいよって感じがするな。
ってことは、今街にいる冒険者達の多くはそっちに行くんだろうし、ダンジョンは今ほど混み合わなくなるのかな?
それだともう少し気楽にやれそうだ。
「手間を惜しんで変に派閥を作られても困るから、許可をしたわ。1ヶ月程戻らないから、その間はお前はこの部屋に詰めておきなさい」
セリアーナ自身のスキルで敵の有無はわかるし危険なんてまず無いだろうけど、エレナ1人だとちょっとハッタリが効かないかな?
……果たして俺がいてプラスになるかって疑問はあるけれど。
「はーい」
まぁ、それは俺が考える事じゃないか。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・31枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




