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右腕を振りかぶり突っ込んできた先頭の左側をすり抜け、ついでにその背中に蹴りを入れ、右端の1体に狙いを付けた。
中央と左端のオーガもそれを察知し、こちらに来ようとしているが、俺の方が速い。
「ていっ!」
上から叩きつけようとする腕を、低い位置から後ろに回り込む様に躱し、膝裏を強く蹴りよろけさせる。
片足だけれど、所謂膝カックンの様になり、体勢を崩し後ろに倒れたところを、すかさず核を貫き仕留める。
「ふぅ……っおわっ⁉」
まず1体を倒したと思ったら、一息つく間もなく最後尾にいた1体が石を投げて来た。
端っこにではあるが、視界に入れてあるから避けること自体は難しくないが、これはちょっと気が抜けない。
さっき蹴りを入れた先頭も、起き上がっている。
一旦上に逃れ仕切りなおすが、俺から目を離さずヤル気充分の様だ。
【緋蜂の針】はダメージこそしっかり入るようだが、一発蹴った位じゃ倒せない。
硬い皮膚にその下の厚い筋肉で、衝撃を防ぎ切ったのがわかった。
頭でも狙えば別かもしれないが……それは難しそうだ。
【影の剣】は通用しているし、今の様に足を狙って、体勢を崩してから核を狙うってのが確実だと思う。
直接核を狙うってのも出来なくは無いだろうけど……、腕を振り回されるとちょっと危ない気がする。
残り4体。
広間の奥に目をやると、こちらを見てはいるがまだ戦闘に加わってくる気配は無い。
数が減って状況が変わればまた違うかもしれないが、今のうちに倒せるのは倒してしまおう。
さっきは、最後尾の1体が投石で牽制し、先頭の1体が正面に立ち、そして中の3体が取り囲もうとしてきた。
まぁ、最後尾からの投石を避け正面に立ったオーガを蹴倒してから、回り込もうとして来た中から端の1体を倒すことでその目論見を潰したが、今まで戦ってきた魔物とはだいぶ違う。
他の魔物も時間差や、囲んできたりはしていたが……やりおる。
ノリだけで突撃しないように気を付けねば!
「っ⁉」
俺が浮いたまま動かないのが気に入らなかったのか、先頭の1体を除き3体で投石を仕掛けてきた。
【妖精の瞳】で見ているが、力に大差は無い。
どれから狙っても一緒だろうし、お次は最後尾から狙っていこう。
◇
「ほっ!」
必殺技っぽいポーズで放った蹴りがオーガの胸に刺さり、仰け反ったところに追撃で核を貫く。
今のが投石組の最後の1体だ。
10分位かかっただろうか?
5体を相手取ったとはいえ、中々手こずらされた。
もっとも、1対1なら今の様に蹴って刺してと、2発で倒せる程度だが……。
問題は奥の方にいる残りのオーガ達が、遠巻きにずっと戦闘の様子を観察している事だ。
今まで俺が戦ってきた魔物は、襲ってくるか逃げるかだったが、様子見してくるのは初めてだ。
いつ参戦してくるか気を張っていたのだが、結局投石組を倒しきっても何もしてこなかったし……、何ともやりにくい。
さておき、仕切りなおそうと再び天井付近まで高度を上げ下のオーガ達を見下ろすと、多少布陣が変わっているのがわかった。
「魔物が陣形なんか敷くなよ……」
少し時間をかけ過ぎたのかもしれない。
しっかり待ち構えられている。
俺から一番離れた場所に大柄の個体、恐らくこの集団のボスが位置取り、Vの字を逆さにした様な陣形を取っている。
鶴翼だっけ?
あんな感じだ。
まぁ、獲物を囲い込みやすいからあの形を取っているのかもしれないが……、いざああも構えられると近寄りがたい。
アカメもさっきの5体のうち1体を倒していたし通用はするんだろうけど、流石に1人プラス1匹であそこに突っ込むのはアホ過ぎる。
中層でのオーガについて調べてはいる。
通路の突破の仕方と戦い方の資料があったんだが、大人数で、それも時間をかけず速攻で討伐する事を前提とした戦い方で、1人で時間をかけて戦うってのは無かったからな……。
陣形を敷くなんて想定外だ。
ちょっとオーガさんを甘く見ていたかもしれない。
「……帰るか」
聖貨は1枚ゲットしてあるし、無駄にチャレンジする必要は無い。
撤収撤収。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・30枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




