124
ジグハルトは西部の傭兵の子として生まれ、子供の頃から戦場に出ていたそうで、そこで飛び交う魔法を見たり、時折流れ弾を食らったりして何となく使えるようになったらしい。
その経験を生かして、当たっても精々クッションを投げつけられた程度のダメージしかない様に加減した魔法を、ペシペシ撃ちつける事で魔力を認識させるようにする。
初めてやったらしいが、実際その方法で1週間程で俺が使えるようになったんだから侮れない。
とはいえ、そこまで威力の調節が出来る者がどれだけいるのか。
おまけに付きっきりのマンツーマンでの指導だ。
効率が悪いにも程がある。
「まあ、どんな形であれ魔法を身に付けられたのはよかったじゃない。フィオーラ、ジグハルト、ご苦労だったわね」
「なに、いい暇つぶしになったさ」
「基礎が誰にでも通用するわけでは無い、という事がわかったのは悪くは無かったわ」
労うセリアーナに、軽く応える2人。
思えば贅沢な講師陣だ。
国どころか、大陸トップクラスの魔導士にマンツーマンだからな……。
その結果がほんのわずかな明かりってのが何か申し訳ない気がしてきた。
「2人とも、ありがとうね」
改めて礼を言っておこう。
「貴方への指導法はまた別の物を考えるわ。楽しみにしていなさい」
ジグハルトは、気にするなと手をひらひら振っているが、もしかしたらフィオーラのプライドを傷つけてしまったのかもしれない。
やる気になっている。
「ぉ……ぉぅ。わかったよ……」
詩集でも読んでおこうかな……。
確か領都のセリアーナの部屋にはテキストが置いてあったし、それ借りるのもいいかもしれない。
「ああ、セラ。明日お母様がお茶会に呼ばれているのだけれど、お前を連れて行きたいそうよ?」
会話が途切れたところで、セリアーナが思い出したように言って来た。
「む?」
ミネアさんか……。
来週領地に帰るしその前にお友達とでも会うのかな?
「お嬢様の明日の予定は?」
「来客予定は無いわね。王都に居るのもあと少しだし、少し買い物でもしようかしら。お前はどうするかは自分で決めなさい」
「わかった。んじゃ奥様の方について行くよ」
買い物って言っても、懇意の商会から品持ってこさせるからな……。
一度、お買い物に行くのかな?と思い付き合ったことあるが、丸1日かけて何組もの商人が入れ代わり立ち代わりやって来ては品物を広げるって事をやっていた。
エレナやメイドさん達は楽しそうにしていたが、買い物に時間をかけない俺には中々辛い時間だった……。
屋敷の中じゃ【隠れ家】に逃げ込むような危険な事は起こらないだろうし、ここは逃げさせてもらおう。
「なら後で伝えておくわ」
「はーい」
◇
朝、起床し【隠れ家】からセリアーナの寝室の壁へと出るが、ベッドが膨らんでいる。
セリアーナはまだ起きていない様だ。
学院が終了してから朝寝坊が続いているが、よくよく考えるとダラダラできる時間は今くらいだろう。
領地に戻れば、やる事はたくさんあるし、結婚も控えている。
結婚したら新領地の開拓等でこれまた忙しい。
怠けようと思えば怠けられるだろうが、彼女の性格だとそれも無いだろうし……。
大変だなぁ。
グ~~
「ぉぅ……」
俺のお腹も大変だ。
「ん……」
朝食に行くため部屋から出ようとしたところ、俺の気配に気づいたのか目を覚ましかけている。
起こしちゃ悪いし、さっさと部屋から出よう。
「おはよう」
部屋から出ると既にエレナが控えており、小声で挨拶をしてきた。
「おはよう。早いね」
「私はいつも通りだよ。お嬢様はまだお休みだったかな?」
「うん。ちょっと起きかけたけど、また寝たと思うよ」
「そう。ならいいわ。セラは今日は奥様とご一緒するんだったね?早めに朝食を済ませておいで」
「はーい」
朝から出発するらしいし、俺もさっさと食べて準備を済ませよう。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




