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「ふぬぬぬぬっ……!」
両手を顔の前にかざし、気合を入れる。
何となく。
本当に何となく程度だが、魔力らしきものが微かに感じられる。
ゆらゆら手の前を漂うソレを崩さない様気をつけながら、ソレに意味を持たせるよう集中する。
これは……いける。
今回はいけるぞ!
「ふぐぐぐぐ……」
もう一息だと、更に気合を込めた。
「っ⁉」
冬とは言え今はまだ昼間。
天気も良く日の光がさしているが、それでも僅かに日光以外の光が、両手の間にあるのがわかった。
「でっ……できたっああああああっ⁉」
「あー……」
遂に魔法に成功した俺の喜びの声が、驚愕の叫びに変わり、上から覗いていたジグハルトは呆れた様な声を出した。
魔法の存在を知って4年か5年。
こっそり練習しつつも全く成果が上がらなかったが、魔力を発光させるだけの初歩中の初歩とは言え、切れかけの豆電球に、同じく切れかけの電池で点けた程度の光量とは言え、遂に俺は魔法を成功させた。
◇
「ただいまー」
練習を終え裏庭からセリアーナの部屋へと戻って来た。
魔力の流れを感じやすいようにと、アイテムは全部外してあるから歩きなのだが、疲れているからか随分遠く感じた。
「おかえりなさい。ここまでお前の叫び声が聞こえたわよ。また失敗したの?」
部屋に入ると、机に向かい何やら書き物をしていたセリアーナが顔を上げ声をかけて来た。
この部屋は庭側にあるが、ここまで届いていたのか……。
子供の声はよく通るからな。
「うるさかった?」
「別に構わないわ。それで?怪我でもしたの?」
「いんや……成功したよ」
「あら、おめでとう。それにしては余り嬉しくなさそうね。何かあったの?」
「むぅ……」
我ながらくだらない事で叫んでしまっただけに何て説明したものか。
「わずかにだけれど、発動は出来たんだよ。ただな、それをアカメが食っちまってな……」
逡巡する俺を横目にジグハルトが笑いながら説明する。
そう。
俺の初魔法は、発動した瞬間に袖から出てきたアカメに食べられてしまった。
潜り蛇は宿主の魔力を吸収するそうだし、魔物は明かりなんて使わないだろうし、なんの攻撃力も無い魔法は餌に見えてしまったのかもしれない。
まぁ?
コツはもう掴んだし、いいんだけどね!
「私の教え方は下手だったかしら……?」
部屋のソファーにかけていたフィオーラは、ジグハルトの教えで俺が魔法を成功させたことが面白くなさそうだ。
「下手というか、言ってる事がわからんかったのよ……」
この2人の今の仕事は俺の護衛と魔法指導だ。
その仕事は、あからさまに戦力を集め過ぎるのはよくないという事で、あくまで便宜上の物であったが、王都を発つまであまり時間が無いという事で、ジグハルトは戦闘が出来ず、フィオーラは研究が出来ずで退屈だったのか、割と真面目に教えてくれた。
教えてくれたのだが、フィオーラはちょっと駄目だった。
神話や詩を交えて魔力の存在を認識し、そのシーンを演じる事で発動するってのが魔法の基本的な身に付け方らしい。
フィオーラの指導法は基本に則ったものだったが、俺は肝心のそこを学んでいないため、上手くいかなかった。
貴族や、平民でも上流階級だと幼少時に礼儀作法の一環でその辺をしっかり学ぶそうだ。
強力な魔法を扱えるかどうかはまた別として、魔法を使えるって事はそう言った教育を受けている証拠でもある。
ある程度の魔法を使える冒険者の数が多くないのは、いい家出身の者で冒険者を目指す者が少ないからなのかもしれない。
もちろん何も教わらずに使えるようになる者もいるが、そんなのは一握りの馬鹿か天才位だ。
その点、その一握りの馬鹿で天才のジグハルトの指導法の方が、シンプルでわかりやすかった。
「大きく息を吸って、腹にグッと力を入れて、後は気合だ気合!」
何という脳筋スタイル。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




