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「興味あるの?」
「そうね。何で浮くのかしら?」
手入れ道具を片付け、皆でお茶を飲んでいるのだが、セリアーナの視線は【浮き玉】に向いている。
そういえば【隠れ家】の中でも俺が乗っている事が多いから、【浮き玉】だけを見る機会はそうそうないはずだ。
強いて言うなら、覚えていないけれど魔人と戦った後、俺が力尽きていた時位だろうか?
「使ってみる?」
「あら、ありがとう」
使ってみたい!って目をしているからね……。
一応俺の生命線でもあるけれど……まぁ大丈夫か。
今更俺を始末したりはしないだろう。
「手、貸して」
「ええ」
俺が主側でやるのも変な感じだが、セリアーナに下賜をした。
なるほど……こんな感じなのか。
アイテムを通して相手の手がわかる。
これを握ればいいんだな。
これで使えるはずだ。
「座ればいいのかしら?」
「うん。座って、浮けって念じれば浮くよ。後は大体思い通りに動くかな?」
「あら、本当」
説明を聞くなり、早速試すセリアーナ。
ヒョイっと浮き上がったかと思うと、部屋の中を動き回っている。
傍から見るとこんな感じなのか……。
何の音も無しに動くから確かにゴーストとかそういう魔物と間違われても仕方が無いかも。
「ねえ、これは物を持ち上げたりは出来ないのかしら?」
クルクル回りながら聞いてくる、セリアーナ。
「1~2キロ位の小さい物なら持ち上げられたけれど、重たい物は無理だったよ」
最初使い方の練習をしている時に、魔鋼を持ち上げられないかと思ったんだが無理だった。
まぁ、人間一人を乗せてあれだけの機動力を出せるんだから、それ以上を求めるのも……⁉
「ちょっ⁉」
「持てたわね」
後ろに回り込んでいたセリアーナが俺を抱え上げている。
そしてそのまま動いているが、何ら差し障りが無い様子。
お……おかしいな?
「外に出てもいいかしら?」
「うん?うーん……危なくない?」
護衛をつけられる程度には注目されている身のはずなんだけど、大丈夫なんだろうか?
「辺りを探ってみたけれど、敵はいないわ。大丈夫よ」
「ふむむ……」
エレナの方を見ると、頷いている。
OKなのか。
「じゃ、いいよ」
◇
「待って待って待って、怖い怖い怖いっ‼」
王都はるか上空を【浮き玉】で高速飛行するセリアーナにしがみつく俺の声が響いている。
てっきり俺を置いて一人で行くのかと思っていたのだが、俺を抱えたまま窓から外へと出てしまった。
まぁ、それだけならまだいいんだが、外に出るなり即急上昇した。
遠くに見える王城の尖塔よりもさらに上にいる。
200メートル後半くらいだろうか?
300メートルまで行ってないと思いたい。
確かに安全マージンを取るにはそれくらい必要なのかもしれないけれど、俺の今までの記録は60メートル程度なのに、何の躊躇も見せなかった。
「空は冷えるのね。風も強いわ」
当のセリアーナは、風になびく髪の毛を片手で押さえながら暢気な事を言っている。
しがみついている俺を片手で支えているが、その状態で宙返りしたからな……。
紐無しバンジーというか、安全バー無しの絶叫マシーンというか……。
セリアーナは何故平気なんだろうか?
前世で恐怖心に敏感な人種と鈍い人種があるってのを見た覚えがあるけれど、それか?
でも、髪と目の色は違うけれど俺も一応人種は一緒のはずなんだけど……。
それこそ日本人の時の記憶があるからだろうか?
「こんなものかしらね。戻るわよ」
ひとしきり飛び回り満足したのか、屋敷上空に戻って来た。
偶に急な方向転換をしていたのは、敵対反応でもあったんだろうか?
何はともあれ、これでこの絶叫マシーンも終わってくれる。
「あわわわわ……」
最後の最後で真下を向いて急降下という大技を繰り出されるとは思いもしなかったが……。
目を閉じていても風圧で、どれくらいの速度で降下しているのか何となくわかる。
絶対100キロは越えていた。
人間、高い所から落ちると死ぬんだぞ?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




