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「知ってるの?」
「賢者の塔の秘宝よ」
賢者の塔。
塔と言ってもただ塔が建っているわけでは無い。
大陸西部の北端にある、自治都市を指す言葉だ。
俺も詳しい事は知らないが、何か色々使ったり研究したりしている機関って認識なんだが……。
「賢者の塔の?それなら何かを作る物なの?」
セリアーナも同じ認識らしい。
「いいえ、違うわ。大規模魔法の補助をする恩恵品だそうよ。もちろんこの情報が正しいかはわからないけれど……」
「大規模魔法の補助……貴方の刺青に似ているわね。でも、それ程の物なのに私は初めて聞いたわ」
「その発想自体が【竜の肺】から得たものだそうよ。そもそも魔導士協会は、過去賢者の塔の外部組織でもあったから研究を任されていたの。世に知られていない理由は簡単。隠していたからよ。私は魔導士協会の研究資料を見たから知っていたけれど、本当にごく一部にしか知られていないはずよ」
強力なアイテムは、建国神話と絡めてその国に定着している事が多い。
【緋蜂の針】の様に名前を変えてあることも多いそうだが、国の内にも外にも牽制になる。
記念祭の時の【神剣メサリア】の様に王家の権威付けにもなるし、むしろ積極的に広める事の方が多いくらいだ。
俺も物語集でいくつか話があったから知っている。
にもかかわらず、パッと聞いた感じ強力そうなのに隠すのか。
「何か問題でもあったの?」
「私の知る限りでは無いわ。彼等は自分達で作り出すことが最優先で、恩恵品の研究は後回しにするの。複製や効果の再現が出来たのなら別だったのかもしれないけれど、結局できなかったし、今も研究を続けているのかもしれないけれど、進展があったとは聞かないわね。教授と呼ばれる塔の幹部達が使用権を持っているけれど、ここ30年近くは使用されていないはずよ」
……研究オタクって感じなのか。
「それでも秘宝として扱う位の代物って事ね」
「そうよ。絵では見た事があったけれど実物を見る機会が来るとは思わなかったわ」
「国宝級2個目か。……オレ凄いな」
まぁ、ガチャは一生に1度2度あるかどうかって位らしいし、これだけ数こなせば出るもんなんだろうか?
「本当ね。褒めてあげるわ」
「……ありがと」
「それよりも……ジグハルト。開放するから寄こしなさい」
ジグハルトの方を見ると【竜の肺】を掲げたまま固まっている。
「そういえばジグさんも知ってたんだね」
「10年位前に私が話したわ。塔に移って幹部を目指すか真剣に悩んでいたけれど、思いとどまって正解だったみたいね」
そう言うなりフィオーラはジグハルトの方へ近づき、スパンッと頭を叩いた。
「お嬢さんが呼んでいるわよ。さっさと渡しなさい」
「あっ……ああ」
我に返ったのか、すまんと頭を下げながらセリアーナに渡す。
最初は渋いおっさんって印象だったのに、だんだん愉快なおっさんに変わって来たな……。
「セラ、来なさい」
「はーい」
まずは【猛き角笛】から開放する。
セリアーナと手を合わせて、気合を入れると淡く光った。
元の見た目はその名の通り角笛だけれど、どんなのになるんだろう?
そのままかな?
「お?」
現れたのは銀色の輪っか。
ブレスレットと言うよりバングルかな?
「アレク。これは貴方が使いなさい。セラ、いいわね?」
やっぱりか……。
「まぁ、よくないけどいいよ」
よくないけどな!
「お前が持っていても仕方が無いでしょう」
セリアーナは俺を見てフッと鼻で笑い、アレクに下賜している。
「次は【竜の肺】ね」
こちらも同じくサクサク済ませる。
さっきと違い形状に変化は無く、ペンダントのままだ。
【浮き玉】や【影の剣】と同じだけど別に意味は無いらしい。
「これはどうしようかしら……そうね。普段はセラが持っていなさい」
ジグハルトとフィオーラにも使えるようにしたのにいいんだろうか?
「……魔法使えないよ?」
「実際の効果はわからないけれど、2人に持たせると強力過ぎるでしょう。使えないお前に持たせておく方が良いわ」
まぁ、鬼に金棒とかそういうアレだな。
「そか。わかった」
それにしても【浮き玉】も含めたら普段から5個も身に着けることになるのか。
随分お高い幼女になってしまったな……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・29枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




