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昨夜、セリアーナの報告はしばらく続き、親衛隊のヴィーラは話が終わるなり帰って行った。
なんとかそこまでは覚えていたが、気づいたら【隠れ家】のベッドで寝ていた。
寝巻に着替えていたし、何とか【隠れ家】を発動し、セリアーナかエレナが一緒に入り、やってくれたんだろう。
とはいえ、いつもと恰好が違ったのが落ち着かなかったのか、目覚めはいつもより早かった。
そんなわけで、折角普段より早く目が覚めたので2度寝するのも何だし、最近少しご無沙汰していたがダンジョンへと向かった。
相変わらず探索時間は1時間を守っているが、そろそろ寒くなって来たからか、早朝はまだダンジョン内も人が少なくのびのび狩りが出来、1枚だけだったが聖貨をゲットと戦果も上等。
「よう、セラの嬢ちゃん」
ほくほく顔で遺物の現金化を待っていると、声をかけられた。
声の主は、受付部門の偉いおっさん。
いつもは上にいるが、下にわざわざ降りてくるのは珍しいな。
「おはよーございます。どうかしました?」
「ああ、おはよう。少し話があるがいいか?」
「いいですよ?」
辺りを見回しているが、人に聞かれるとまずい様なことなんだろうか?
昨日の今日だが、このタイミングでわざわざ俺に話しかけるなんて、セリアーナの婚約とか新領地の事かな?
「実はな……」
まだ早朝で辺りに人はいないからかここで話す様だ。
「セリアーナ様が昨日発表された、ゼルキスの東を開拓するって事だそうだが、本当なのか?」
「そうらしいです」
売り込みか?
「そうか……お前さんとこが引っ張っていった「ラギュオラの牙」だが、あいつらはどういった扱いになるかわかるか?」
「彼らはアレクの部下になるらしいので、多分一緒に行くと思いますよ?」
「アレクシオか!そうか……それならよかった」
安堵の息をつく偉い人。
自分の売込みじゃなくて、彼らの事を気にしていたのか。
「もちろん嬢ちゃんを攻撃したことは事実だし、死刑になってもおかしくは無かったんだが……あいつらも王都圏で長いこと頑張っていたからな。魔境の危険度はダンジョンの比じゃないからどうなるか気になっていたんだ。まぁ以前素材の発注をしていたから使い捨てにはしないだろうとは思っていたが……」
よかったよかったと笑いながら上に引き返していった。
そうか、今回は違ったけど俺も婚約やら開拓やらの事を聞かれる可能性があるな……。
よく知りません。
アレクに聞いてください。
これで乗り切るのが無難だな。
◇
「ただいまー」
「あら、お帰りなさい。早いのね」
冒険者ギルドから出てまっすぐ屋敷に帰り、窓から部屋に入るとセリアーナとエレナが学院へ向かう準備をしていた。
昨日パーティーだったってのにタフだなー。
「まだこの時間だと開いてるお店も無いからね。2人はもう行くの?」
「ええ。そろそろ迎えが護衛と一緒に来るわ。昨日最後の方はほとんど寝かけていたけれど、ちゃんと覚えているかしら?」
「ヴィーラさんの事?大丈夫。覚えてるよ」
「なら結構。ああそういえば、他の加護や恩恵品はもう知られているけれど、【隠れ家】の事はバレないように気をつけなさい。彼女達は騎士団総長に報告の義務があるから」
騎士団総長と言うと……確か【緋蜂の針】の時にいたおっさんの1人だな。
じーさんと仲が良さそうだったけれど……。
「騎士団には知られないほうがいいの?」
「ええ。騎士団自体は問題無くても、どこから漏れるかわからないわ。万が一に備えて知る人間は少ない方がいいのよ」
なるほど。
その万が一ってのは潜入や避難する時だし、【隠れ家】の事を知られていなければ警戒されずに済むか。
その万が一が結構あった気がするが、気をつけよう。
「ん?」
話しをしていると、コンコンと扉を叩く音がした。
「迎えが来たみたいね。行きましょう」
「はい。それじゃあセラ、行ってくるね」
「はーい、行ってらっしゃい」
部屋の前で2人を見送り、中に入る。
さて……俺はシャワーでも浴びるかね。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・27枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】・4枚




