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程なくしてアレク達が帰還した。
彼らは騎士団との合同任務で、例年より目撃情報の多い王都周辺の魔物を倒していたらしい。
まぁ、なんというか……魔物の違法取引を行っていた連中が軒並みいなくなったからね。
彼らが魔物の捕獲ついでに間引きを行っていたのに、それが無くなったから人里近くまで姿を現していたらしい。
金を惜しまなければ彼等も処刑されたりしなかったろうに……役に立っていたとはいえ犯罪は犯罪。
残念な事だ。
とはいえ、放置しておける問題でも無く、王都圏はもちろん各領地の騎士団が冒険者と連携を取って対処することになった。
急な任務という事で、ある程度統制の取れる貴族の専属冒険者がメインになったらしいが、来年以降は通常の任務として冒険者が引き受けることになるだろう。
「魔獣種が中心で、魔虫、稀に妖魔種がいましたね。主は数頭いましたが、魔王種はいませんでした。まあ、丁度いい連携の確認になりましたよ」
そんな訳でアレクからの報告は終わりだ。
領地間をまたいで移動し、複数種の魔物を倒す。
開拓に向けての訓練だとは言え、結構タフな任務だと思うけど、連携の確認程度なのか……。
まぁ、あの人達強いからね。
「はい。乾いたよ」
「お~、ありがとう!」
「あら、綺麗になったじゃない」
エレナに渡されたのは、アレクに土産に貰ったトリの魔物の尾羽だ。
50センチほどの長さでキジの尾羽の様に節が入っていて、アレクに貰った時はまだ汚れが残っていたが、洗って乾かすと根本は黒いが先に行くにつれ鮮やかな赤色になっていく。
見事なものだ。
服や帽子の飾りに使ったりするそうだが、俺はどうしよう。
部屋に飾るか……?
外の魔物はダンジョンの魔物と違い核が無く死体が残るため、こういった物が手に入る。
売却するもよし、何かの素材に使うもよしだ。
「肉も美味かったぞ」
美味かったらしい。
◇
更に日が経ち来週には伯爵一行がやって来る。
屋敷の人達は主人はじーさんではあるものの、ミュラー家の当主がやってくるわけだし、普段はちょこちょこお茶をしたりともう少し緩い雰囲気だが、ピリピリしている。
一方俺が入り浸るセリアーナの部屋は東側の端だし、こちらはいつも通りだ。
セリアーナにしても家族と会うのは半年ぶり位なのだが、全く変わらない。
家族仲は悪くないと思うんだけど、淡白だ。
まぁ、それは俺が考える事じゃない。
今大事なのはケーキの切り分けだ。
【影の剣】なら思い通りに切れるが、刃は新しいものになるとはいえ、普段魔物ズバズバ切っている物で食べ物を切るのは俺が嫌だ。
「はい。どーぞ」
中々うまく切れたと思う。
セリアーナの部屋から【隠れ家】に入り、4人でお茶だ。
プレゼントはいらないと言っていたが、世話になっているし、やれることはやっておきたい。
そんな訳で、フィオーラお勧めの店でケーキを買って来た。
ケーキというよりは、ミルクレープの様な物だ。
手が込んでいるだけあって、お値段も大銀貨2枚と高価だ。
「あら美味しそうね」
「フィオーラさん、お勧めの店だよ」
「セラ、ご馳走になるよ」
「俺の分まで悪いな」
アレクはもう過ぎていたからな……、先月だったらしい。
もうちょい早くわかればお酒位は用意したんだけど、来年憶えてたら買っておこう。
「そうね、来週からはあまり時間が取れないだろうし、ここで話しておきましょう」
ケーキを食べ、お茶を飲みつつお喋りをしていたが、セリアーナが改めて話を始めた。
「来週末に私の誕生パーティーを王城で行い、そこでリーゼルとの婚約が発表されるの。セラとアレクは屋敷に居て頂戴。護衛は王家が付けて下さるから心配いらないわ」
ほうほう。
ついに発表か。
そして俺達はお留守番。
「今までは私が出向くこともあったけれど、これからはそれも無くなるわ。アレクは仕方ないけれど、セラ、お前は昼までに用を済ませて、屋敷に詰めておくようにしなさい」
「はーい」
一応俺も護衛の端くれだしね。
とはいえ、いつも通りので、やる事は変わらなそうだ。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・14枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・26枚
エレナ・【】・【緑の牙】・2枚
アレク・【】・【赤の盾】・4枚




