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「ぉぉ…」
玄関で2人を出迎えたのだが、思わず声が漏れてしまう。
「ふっ…どうだ?」
得意げなジグハルト。
ざんばら髪に髭もじゃのもっさり男が、髪を撫でつけ後ろで縛り髭も剃って、おまけに着ている服も冒険者スタイルでは無く、こざっぱりした格好だ。
いっぱしの紳士じゃないか。
「私が用意しなければいつもの格好だったでしょう?」
昨晩聞いた「魔導姫」ってこのフィオーラの事なのだが、ライバルっぽい印象を受けたが、むしろ仲が良さそうな気がする。
少年漫画的な関係なんだろうか?
「はっ、俺はそもそも余計な荷物は持ち歩かない主義なんだよ」
そういえば拠点を持たずにあちこち移動しているんだったな。
そりゃ使う機会の少ないものは持たないか。
そんなジグハルトに対して、フィオーラは先日と同じく、長袖の上着に足首近くまであるスカートだ。
この暑い中その格好で大丈夫なんだろうか…?
「ま、いいや。お嬢様はもう部屋にいるから案内します」
ほっとくと言い合いを楽しんでそうだからさっさと移動してしまおう。
◇
「ようこそ「閃光」ジグハルトに「魔導姫」フィオーラ。歓迎するわ」
「ああ。よろしく頼む」
「ふぅん…セラに聞いていたイメージと随分違うわね」
セリアーナはジグハルトの頭から足の先までじろじろ見た後そう言った。
まぁ、もっさりの凄いやつ、としか俺は言ってなかったからな…。
「フィオーラさんが用意したらしいよ」
「私をエスコートするのだから当然です」
……その為だったのか?
「まあいいわ、話を進めましょう。ジグハルト、貴方は私の専属になるという事でいいのね?」
「ああ。ただし俺が出来るのは戦闘だけだ。部下を率いたり、騎士や貴族と折衝したりは出来ないと思ってくれ」
「構わないわ。貴方には新領地の開拓に向けて魔境での戦闘や、いずれ開くダンジョンの調査を期待しているの。場合によってはパーティーを組んでもらうこともあるでしょうけど、基本的には個人で動いてもらうわ。勿論その際の支援は任せて頂戴」
「それならいい。任せてくれ」
それを聞き力強く頷くジグハルト。
魔境ってのは、本来は魔王災が重複しまくっているエリアを指す。
魔王同士が強化しあい、あいつもこいつもどいつもそいつも魔王級という訳の分からないことになっているエリアだ。
幸い、そこを出ると弱体する事を理解しているのか、滅多に出てくることは無いそうだが、多くの魔物や獣が集まっている。
そして東部の未開拓エリアである大森林は全体がそんな感じらしい。
そこでの戦闘の方が良いのか……このおっさん。
「それで、フィオーラ?貴方はどうして私のもとに来てくれるのかしら?」
この人もアレなんだろうか?
魔法を極めたいとかそういうアレ。
「そうね……殿方には退出していただきたいわ」
「いいわ。アレク、ジグハルトをお祖父さまの部屋へ案内しなさい。話を聞きたがっていたの」
じーさん……ミーハーだな。
「わかりました。行きましょうジグハルトさん」
「ジグでいいぞ、アレク」
何かわかりあう事でもあったのか、親しげに話しながら2人は出て行った。
お……俺はどうしよう?
いていいのかな?
「貴方はいて頂戴」
「なんでお前まで出て行こうとするの……?」
「いや……なんとなく」
でも俺にいろって事はスキンケアかな?
「さ、話して頂戴」
セリアーナが、改めて話を促す。
「コレの事はご存じ?」
フィオーラは顔の刺青を指す。
何となく法則性があるのはわかるが、なんて書いてあるのかはわからない。
魔法陣ってやつだな。
「ええ。大規模魔法の補助になると言われている魔法陣ね」
「そう。全く無意味のね」
セリアーナが折角ぼかしたのに、はっきり効果が無いと言い放った。
つまり……アレかな?
刺青を消したいって事か?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




