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「ジグ、貴方がそんな格好だから驚いているわよ?ちゃんと服を着なさい」
何か凄い見た目の人がジグハルトを窘めている。
声の感じから女の人だとわかったが、何なんだこの人は?
「ああ?ちげーよ。お前見てびびったんだろう」
「失礼なこと言わないで。あなたがセラね。私はフィオーラよ」
「あ、セラです」
近づいてきたことで、姿がはっきりと見えた。
髪の色はブラウンで、瞳も多分そう。
ジグハルトと一緒だ。
そして顔の右側は黒いんじゃなくて、刺青だ。
それも顔だけでなく、首や腕、丈の長いローブを着ているから少ししか見えないが、足にもだ。
読めないがびっしりと文字の様な物が描かれている。
もしかしたら右半身全部に入れてあるんだろうか?
「凄いだろ?」
「う…うん。奥さん?」
「違うわ。古い馴染みよ」
本当に何者なんだろうか?
この見た目少なくとも堅気じゃ無いだろうけど、フィオーラなんて冒険者知らないぞ?
「お前、手紙の中身は見たか?」
「うん。見たって言うか聞いた」
「一人連れていきたいってのはこいつだ。冒険者じゃなく魔導士協会に所属しているがな。ま、役に立つはずだぜ?」
魔導士協会か。
一応民間組織らしいけど、
「フンッ偉そうに…。まあそういう訳よ。あなたのご主人様に伝えておいて頂戴」
「はい…」
なんだろうか、この迫力は…。
セリアーナが歳食ったらこうなりそうだな…いかんいかん、ペースを持って行かれて肝心の用事を伝えてなかった。
「あぁそうだ。明日の夜に来てって言ってたけど、大丈夫かな?」
「問題無い。5時頃に向かうと伝えておいてくれ」
「はーい。んじゃ、オレはこれで…」
「窓から出た方がいいぞ。下のが五月蠅いからな」
やっぱお友達とかじゃなく無関係の人たちだったのか。
◇
自身に魔法陣を刻むことで、大規模魔法を使う際、魔素の吸収の効率化が図れる。
今から100年近く前に西部で提唱され、研究者の間でもその説は常識とされていた。
更に50年程前に、東部でも魔導士協会に所属する著名な魔法研究家の主導で、その説の研究が進められた。
更に30年程前、当時魔導士協会の秘蔵っ子と言われていた少女にその研究の集大成ともいえる魔法陣を刺青として刻み込んだ。
魔素の高効率吸収と、魔法の発動の負担軽減を果たし、その結果少女は強大な魔法を操り、多くの強力な魔物を、攻め寄せる敵兵を焼き払った。
出くわさないだけで、たとえ竜種であろうとも撃ち落とせる。
そう言われ、いつしか「魔導姫」の二つ名で呼ばれるようになった。
騎士団と行動することが多く、活動の場も国境付近が多かったことから、メサリアの平民にはあまり知られていないが、貴族や外国の者には広く知られていたそうだ。
ところが、丁度西部の戦争が収まった20年程前からその常識に疑問の声が上がり始めた。
「魔導姫」に匹敵する魔導士ジグハルトの存在こそ知られていたが、彼程ではなくても魔法陣を刻むことなく強大な魔法を操る者が他にも世に知られ始めたのだ。
そこで本格的に調査を行った結果わかったことが、実は魔法陣を刻んでも効果が無いのでは?という事だ。
「要はそれまで大規模魔法なんて危なっかしい物を使おうとする機会が無かったって事だな。魔王災も騎士団が主に当たっていたが、そこに傭兵達も参加する中で、大規模魔法を試してみようってのが現れだした結果、実際に出来てしまったってわけだ」
以上でアレクによる近代魔法史講座は終了だ。
「…冒険者とかも使ってなかったの?」
「そうらしい。実際今だって大規模魔法を使うより速さを優先しているからな。エレナだってそうだろう?」
「確かに…」
エレナの戦い方を思い出すが、魔法は牽制程度で、本命は武器での一撃だ。
「まあ、だからこそポンポン使えるルバンや「閃光」が異常なんだがな…」
「あれ?結局効果が無いかどうかはわからないの?」
「効果は無いそうよ。でも、実際に使えてしまう者がいる以上それを言う事は出来ないのね。それと、今でも行き詰った魔導士が最後の最後に縋る手段としては残っているらしいわ。効果があるのかはわからないけど…」
「フィオーラさんが使えるのは?」
「彼女が単純に優秀なだけでしょう」
身も蓋も無い事を……。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




