5話
そして、二週間が経過する。それまでは森には入らず、周りの小動物を殺すことで小銭を稼いでいく。その日はやってきた。森から1匹のゴブリンが現れ、ニタッと笑みを浮かべるのだった。それはまるで獲物を見つけた時の目だ。
今まで殺してきた小動物は、自分達から見て下位的な存在、言い換えると捕食対象だったということだ。捕食者から、捕食対象として見られることへの恐怖から足がすくむ。ガタガタと歯を鳴らしながら恐怖で震えるものもいるくらいだ。そんな、中アルが立ち向かうのだった。
「俺を放置して、先に家に帰れ!」
ここは俺に任せて先に行けの亜種がここで現れるのだった。ゴブリンが森に出てくる状況、それはキング種の出現と同じ意味だ。そのことは知っていたようで、それを伝えるために行かなくてはならない。誰かがしんがりを務める必要がある。そして、門番のところにたどり着くのだった。
あとは任せたと言った後には、森の中からさらに複数体のゴブリンが出現する。それがアルを襲うのだった。何体か殺すほど善戦するものの、スタミナ切れだ。誰かが武器を流通させていたのか、装備は初心者とはかけ離れている。
「もう、門番のところについた頃だな・・・。俺もそろそろ退却するか」
下がろうと引き腰になっていた時だ。ゴブリンが急な攻撃を仕掛けてくるのだった。今までは、適当に武器の能力を使わずに振り回すだけの攻撃だったのが、本気の振込みによる袈裟斬りだ。アルの持っていた武器は折られ、その体に大きな傷がつけられるのだった。そこから大量の血が噴出し、スプリンクラーのように広がる。力や魂が抜けるように地面に倒れ込むのだった。これがちょうど残りの3人が門番に着いた頃の出来事だった。
キルは新たなスキルを手に入れたのだった。それは感覚的で一瞬でわかるものだった。手に入れたスキル、それは生者感知だ。通常であればアンデットが持っており、生き物全てを感知すると言うものだ。目元を覆い、鼻水を啜る。そして肩を震わせるのだった。
「早く助けに行かないと、アルがアルが!」
「何があったのかお兄さんに聞かせてみな?」
「森から、森からゴブリンが!」
微笑ましいものを見ていた兵士の目つきがキリッとしたものに変わる。
「一旦、お家に帰りな、お兄さんが連れてくるからね!」
そう言いながら走り出すのだった。無気力な少年少女は、その悔しさから新たな力を得るために、魔物撲滅を掲げ奮闘する。そんな物語になるはずだった。
ファーストダウン




