23話
戦闘用の入学テストの部屋に移動した。
この世界はスキル主義となっている。そのため、この戦闘試験として出されるのは、そのスキルを使用して行われるアーツだけだ。
そのアーツを使うことで、能力を証明する。それだけになる。もちろん、アーツを使わずとも戦闘を行うことができる者も中には存在している。
戦闘の相手は、冒険者や教員が受け持っているのだ。そして、戦闘スキルの種類が多いため、この試験を受ける人も多くなる。そのため、適当に振り分けられテストを受けることになるのだった。
その冒険者は、数ヶ月前に一緒に馬車に乗っていた人たちだったのだ。顔を見た瞬間思い出し、向こうも見つけたことで手を振ってくるため、振り返す。
組み分けされたのは見知らぬ冒険者の人だった。そして順番が回ってこようとしている時だ。あの転生者がステータスだけで倒してしまったのだ。
ステータスの暴力によるスピードでの殴り込みだ。この世界の人間がステータスを伸ばす方法はパッシブスキルしかない。技術を用いて対抗するものの、押されつつあるのだった。
(異質であり脅威でもあるか…。早急に心か精神を破壊する必要があるな…)
あの予定としていたものを早める必要が出てきた。今の準備段階は、どう襲撃を仕掛けるのかや偽装の防具や武器を集めること。この準備段階を丸投げしているのだ。
共通の人類滅亡が目的のため、快くして受け入れてくれる。堕落するものはおらず、素早く実行にまで進んでいるのだった。
数分の攻防により、この戦いは終わり次の順番に回される。相手をしていた冒険者は肩で息をしている。そして深呼吸を数回することで瞬時にスタミナを回復させ、スッと立ち上がるのだった。
手に持つ紙に文字を書く。点数とかだろう。
「次!」
イカれたチートを持っているのはあの転生者くらいだ。何人かが経過したのちに順番が回ってくる。
向こうの人は自分の武器を使うか、何も武器を持っていないものには徒手格闘で合わせるようにしているのだった。
特に短剣といったリーチの短い武器を使う人と戦う時には、格闘術で戦っている。そのため、短剣で戦おうと考えたのだった。
「開始!」
と開始の合図だけを専門としている人が声を荒げる。
向こうから攻めてこないため、責め立てる必要がある。肩から力を抜き、腕をダラーンと下げる。ゆっくり歩きながら近づくのだった。
そして、間の距離が7歩ほどになった時に、急激に加速をする。最初の奇襲攻撃は右手の突きだ。
冒険者の方は手首を外に押し出すことで短剣の剣先の軌道を逸らし、反対側に逃げることで短剣を完全に避け切る。
懐に入るために近寄ってくるのだった。右手を振り戻そうにも攻撃が間に合わない。右腰に刺さっている短剣を左手で引き抜き、振り払うのだった。
警戒されていたのか、冒険者が横に飛び退くことで攻撃をする機会がなくなる。
(視野が広いな…)
あの短剣だけに注視していれば、この攻撃で決着がついていただろう。2本の短剣を持ち、二刀流に切り替える。今度は減速はせずに、近づき突きを放つのだった。
だが、その手には短剣は握られていない。途中で手放され、剣先を上空に向けたまま短剣が地面にぶつかろうとしているのだ。
冒険者は突きだと判断して、ただの拳を同じように外に弾くようにして避ける。短剣がコールの足に当たると同時に冒険者の腹に突き刺さるのだった。
あの受付に褒められた奇襲の方法だ。短剣の重心を下に向けることで、落下時に重い方が下に向く。その性質を生かしての持ち手を足に当て、短剣を蹴り入れるという方法だった。
これで試験は終わりのようだ。ポーションを飲むことでその傷を治し、再び試験が開始される。試験が終わったため、そのまま家に帰るのだった。




