22話
弓のテストといっても、その場で立って矢を放つといった競技が主体となっているものだ。的も動いていないため、簡単な的当てとも大差がない。
いつもの訓練であれば、ここに奇襲の攻撃がやってくる。その攻撃を避けながら矢を放つことをやらされていたのだった。そのため、この訓練は緩いといっていい。
順番に名前が呼ばれ、矢を放つように言われる。距離や弓の調子を確認するために、練習時間も与えられる。その練習時間を使うことで、弓に慣れろと言われるのだ。
そんな弓に慣れたところで名前が呼ばれ順番に並ばせられる。そして、順番通りに的を射抜いていく。大きくずれることはないが、矢が的に当たらない人もちらほら存在している。
もちろん、優れている人は中心を狙い打つこともしているのだった。
目立って上のクラスに行くのもごめんなため、中心のやや下あたりを適当に射抜く。全ての的の中心から外した部分を打ち抜き、この試験が終わる。
試験が終われば次のところに行ってもいい。そのため、近接格闘のテスト会場に移ろうとしていたところだった。爆発音が響き渡る。そして、監督の人が慌てたように
「確認をしてくる!そこで大人しくしておくように!!」
と言いながら爆発があった音に向かって走っていくのだった。生産系の試験は筆記試験と作ってきたものを提出するというものがある。そのため、爆発があったのは魔法一択だ。
この辺りにいるものは顔見知りが少ないのか、誰も話そうとはしてこない。冒険者のパーティーに2体の弓を入れる人なんてほとんどいないのだから。
パーティーという共通の知り合いがいなかったことで、誰も友達の人がいないという状況ができる。
(暇だな〜。…話しかけるか)
「そこの的の中心に、全ての矢を当てた人!聞きたいことあるんだけど質問していい?」
「私ですか?」
男なのに私と言っていることから、商人か?
「そうそう、あー、俺の名前はコールよろしく」
「私の名前はクレスです。以後おめしりおきを。ところで質問とは?」
「弓の中心に全部当ててたから、そのコツを聞きたいと思ってさ〜」
もちろん、そんなの知っている。だが、暇つぶしも兼ねて話してもらうではないか。
「感覚派ですからね〜」
「それでもお願い。聞きたい奴は近寄ってきなよ」
何人かのものが近寄ってくる。暇を潰したり、弓が上手くなりたいと感じているものたちが近寄ってくるのだった。
「まず的に当てるコツからでいいかな?風を感じることですね」
横から吹いているのか、上に向かって吹いているのかを知ろということだ。矢は軽いため、簡単に風で流され方向が変わる。
風を知ることで、矢を狙った方向に当てやすくなるのだった。
「あとは、体幹と筋力が問題の人もいるよ。そこの的に届かなかった人は体幹が悪くて、その3つ後に撃っていた人は筋力不足かな?」
的の前の地面に突き刺さっていた人たちのことだ。体幹が悪いことで、矢を入れ構えていた時に体が前に倒れていた。それにより、角度が地面に向いている。その状態で矢を放ったことで地面に突き刺さったのだ。
「確認が終わったから、各自次の試験か宿に戻るかしろよ!」
試験官の人が帰ってくるやいな、そう大声を出し言い切るのだった。そしてすぐに終わらせるため、移動を開始したのだった。




