208話 魔族の剣士
「待たせたな」
刃の先をノアに向けた。
ノアもこちらに刃を向ける。
「気にしていないよ。キミと戦うことはとても楽しそうだからね。少し待つくらいなんてことないさ」
「そう言ってもらえると助かる」
「ただ、本当に一人でいいのかい? 僕は、別に全員でかかってきてもぜんぜん構わないんだけど」
「いや、俺一人だ」
「ふーん……それは、僕を一人で倒すことができる、っていう自信のあらわれかな?」
「まさか」
心は歪んでいる。
しかし、ノアの剣の腕は確かだろう。
でなければ、ソーンさんが苦戦することはない。
剣の達人。
ヘタをしたら、想像している倍以上は強いかもしれない。
だとしても、
「負けるわけにはいかないな」
わがままを言い、一対一となったのだ。
これで俺が負けて死んだりしたら、アルティナ達はトラウマになってしまうかもしれない。
自分のことも責めてしまうだろう。
そんなことにならないように……勝つ。
しっかりと剣を握り、改めてノアと対峙した。
「……」
「……」
視線を交わす。
そして……剣を交わす。
ギィンッ!
互いに同時に踏み込んで、同時に剣を振る。
刃と刃が激突して甲高い音が響いた。
衝撃に手が震える。
ノアは剣を押し込んできた。
そのまま叩き斬るつもりなのかもしれない。
力が強い。
一瞬でも気を抜けばそのまま……ということになりかねない。
心はともかく、高い技術を持っていると予想していた。
ただ、それだけではなくて純粋に力も強いみたいだ。
「ならば……!」
「へぇ」
巨大な力と真正面からぶつかる必要はない。
片足を一歩後ろへ。
同時に刃に角度をつけて、ノアの剣を受け流した。
ヘタをしたら彼の力に負けて斬られていただろうが、うまくいった。
再び前に出て、同時に剣を振る。
刃は横に。
斬るのではなくて叩くように。
「これは……」
剣を鈍器のように扱う。
さすがにこのような戦い方はノアは知らなかったらしく、驚きの表情を。
実のところ、このような攻撃は俺も初めてだ。
ただ、試す価値はあると思った。
これもおじいちゃんの教えになるのだけど……
『よいか、ガイよ。戦いは、いかに相手の予想を超えるかが重要になるのじゃ。予想のしていない行動、知らない行動……そのようなことをされれば対処は難しいからのう。故に、いかに相手に読まれぬか、が重要となる。まあ、これが全てではないが覚えておいて損はないぞ。そんなことを言ってみた、とな』
俺の剣はおじいちゃんに教わったもの。
言うなれば、トマス流といったところか。
自分で編み出したものはない。
全ておじいちゃんに教えてもらった。
ただ、それを己の力量不足とは思わない。
むしろ誇りに思う。
おじいちゃんの全てを継ぐことができたのだ……と。
「いいね」
できる限り、ノアの意表を突くような攻撃を繰り返していると、彼は小さく笑う。
その笑みは子供のように純粋で。
そして同時に、ものを知らない故の悪意を孕んでいた。
軽いトラブルで一回、更新を休みます。詳細は活動報告にて。




