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202話 剣の語らい

 ノアに挑むため、俺達は鍛錬を積んだ。


 何日もノアを放置するわけにはいかない。

 軍が動いてしまうかもしれないし、ノアがどこかへ消えてしまう可能性もある。


 故に、短期の鍛錬。

 3日間限定だ。


 それだけの短い期間でなにができるわけでもない。

 大幅な能力上昇なんて見込むことはできない。

 やらないよしはマシ、といった程度。


 アルティナ達もそれを理解しているのだけど……

 体を動かさずにはいられないようで鍛錬を申し出てきた。


 そして……




――――――――――




「ふぅ」


 夜。

 宿から出て、夜の街を歩く。


 大体の家から灯りは消えていた。

 ただ、商業区の方はいくらか灯りが見える。


 たぶん、酒場などだろう。

 この時間ならまだ営業していて、遅くまで働いていた人達が飲んでいる。

 時折、笑い声が聞こえてきた。


 ……街の近くに魔族がいること。


 当然ではあるが、そのことは街の人々に知らされていない。

 そのようなことを知ればパニックに陥るだけ。

 情報統制がされていた。

 セリスも苦労しているようだ。


「なにも知らない……それでいいのだけど、なにも知らないままにできるだろうか?」


 明日、俺達はノアに挑む。


 相手の実力は未知数。

 もしかしたら思っていたよりも弱いかもしれないし、強いかもしれない。

 実力が想定と違っていたとしても、戦いを完全に読むことはできず、不確定要素で変動することがある。


 確実な勝利なんて確約できない。

 敗北もありえる。


「……こんなに緊張するのは、いつ以来だろう?」


 たぶん……

 ドラゴンに挑んだ時以来だろうか?


 あの時は、アルティナの手前、平静を装っていたが……

 内心ではあれこれと考えて、かなり緊張していた。


 今は、その時と近い。


「勝てるだろうか……?」


 不安は拭えない。


「……あれ?」


 気晴らしに出た散歩。

 その途中、大きな人を見つけた。


「ソーンさん」

「む?」


 夜の公園。

 ソーンさんが静かに空を見上げていた。


「こんなところでどうしたんですか? 俺は散歩なのですが」

「……少し緊張してな」


 俺と同じ?


「なんだか意外ですね。ソーンさんは、そういうことに無縁だと思っていました」

「そのようなことはない」

「そうですね……すみません。勝手に決めつけてしまって」

「いや」


 よかった。

 気を悪くした様子はない。


 そうすることが当たり前のように隣に立つ。

 そして、空を見上げた。


 広がる夜空。

 星が無数に散りばめられていて、宝石のように輝いている。


 綺麗だ。

 こんな光景を見ていると、自分の存在がとてもちっぽけに感じられた。


「……グルヴェイグは」


 ソーンさんが静かに口を開いた。


「なぜ剣を取る?」

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