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197話 混戦

 魔族と繋がりを持っているであろう武具店。

 強制捜査を執行したものの、店員は開き直り、一般客を巻き込んで暴れる始末。

 魔物も飼い慣らしていたらしく、場は混沌としてしまう。


 こちらのミスだ。


 これ以上、事態を深刻にしてはいけない。

 また、確実に犯人を捕らえなければいけない。

 ここまでして逃がしてしまいました、なんてことになれば目も当てられない。


 故に、多少の無茶をすることにした。


 表はアルティナ達とプレシア達に任せる。

 俺は、一人、店の奥に突入した。


 このような状況で単独行動は危険だ。

 おじいちゃんも言っていた。

 無茶をすることはいかん。

 遺憾だけに。


 ……話が逸れた。


 とにかくも、早急に武具店の店主を確保しなければいけない。

 『アレ』の処分と言っていた。

 おそらくは魔族との繋がりを示す証拠だろう。


 絶対に処分させるわけにはいかない。


「……見つけた!」

「なっ!?」


 店の奥の狭い通路を駆け抜けて。

 ほどなくして、さきほど真っ先に逃げ出した男が見えてきた。


 男は慌てて速度を上げるものの、遅い。

 俺も速度を上げて、一気に距離を詰める。


 男の背中に手を伸ばして……


「うぁ!?」


 ぐいっと、男の背中を掴んで引っ張る。

 走っている最中にそのようなことをされれば、当然、転ぶわけで……


 ドガシャアッ!


 男と一緒になって転び、床を転がる。


 あちらこちらぶつけてしまうが……うん。

 骨に異常はないだろう。

 多少、痣になるかもしれないが、冒険者をやっていればそれくらいは当たり前だ。


 一方の男は……


「うっ……ぐぅ……」


 立ち上がれない様子で、苦しそうにうめいていた。


 俺は倒れることを覚悟していた。

 ただ、男はそんなことはなくて、咄嗟の受け身を取ることができなかったようだ。

 その差だろう。


「自分でやっておいてなんだが、大丈夫か?」

「き、貴様……この俺に、このような……!」

「元気そうだな。なら、寝ててくれ」

「かはっ!?」


 こめかみの辺りを擦るようにして拳を振り、男の意識を奪う。

 こういう時のために、とあらかじめプレシアからもらっておいた魔道具で男を拘束した。


 これでよし。

 あとからやってくるであろうプレシア達に任せよう。


「俺は……この先を確認するか」


 男が処分しようとしていた『アレ』。

 その正体を確かめるべきだ。


 もちろん、どのようなものかまったくわからない。

 見当もつかない。


 扱いに困るかもしれないが……

 まずは、確保を優先するべき。

 その後は、プレシアや冒険者ギルド、あるいは国などに任せればいい。


 もう一度、男が気絶して、完全に拘束されているのを確認してから、俺は奥に進んだ。


 今度は駆けることなく歩く。

 ゆっくりと慎重に。

 いつ、なにが起きても対処できるように集中して。


「……」


 しばらくして扉が見えてきた。

 複数の鍵。

 それと……魔道具だろうか?

 魔法で保護されているようだ。


 普通に考えると、突破は困難。

 ここでプレシア達を待つべきだろうが……


「ふむ……やれるか?」


 抜剣。

 一閃。


 ガチン、という音と共に扉が開かれた。


 鍵も魔法も、強引に断ち切ったのだが……

 うまくいったようでなによりだ。


「さて、なにが待ち受けているか……?」


 緊張に息を飲む。


 呼吸を整える。

 心を鎮めた。


 そして、ゆっくりと扉を開く。

 その先に見えたものは……

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