170話 繰り広げられる死闘
フェルミオンは、再び突撃してきた。
速度はさきほどと同じ。
動きも同じ。
ただ、その身にまとう殺気の量は桁違いだ。
おそらく、さきほどはただの様子見。
俺が、どの程度やるか、と計っていただけに過ぎない。
しかし、今は違う。
俺を『敵』と認めた。
そして、『敵』を倒すために、最大限の力を振るう。
全力で狩りに挑む。
そんな本気を感じた。
「さあ、これならどうですか!?」
「速いな……!」
「さあさあさあ!!!」
おそらく、フェルミオンが持つ不可視の剣は五本。
その全てが生き物のように動いて、四方八方から襲ってきた。
剣を盾のようにして防いで。
あるいは、こちらから剣を振り、迎撃して。
防戦一方になってしまうが、どうにかこうにか戦えていた。
「剣が見えないから、なにをやっているかよくわからないけど……師匠って、なんか、とんでもないことをしていない……?」
「で、ありますね……たぶん、相手の剣は複数。その全てを捌くとは……」
「お、お兄ちゃんって、思っていた以上に無茶苦茶だったんだんで……あれ、私だったら、最初の一撃で沈んでいたと思うよ」
アルティナ達は、離れたところで様子を見ている。
それでいい。
まずは、俺がフェルミオンと戦う。
不可視の剣との戦い方を示す。
そうすることで、アルティナ達に、フェルミオンと戦う際のコツを掴んでほしい。
もしも俺が倒れたとしても、そうすることで次に繋ぐことができる。
とはいえ。
あくまでも、それは最終手段。
俺とて、ここで負けるつもりはない。
フェルミオンの不可視の剣を防ぐことは難しい。
剣が見えないため、軌道を予測することができない。
フェルミオンの構えや動きも、剣の常識から大きく離れているため、相手の動きを見て予測することも難しい。
ならば、どうするか?
「……」
俺は目を閉じて、その上で剣を両手でしっかりと持ち、正眼に構えた。
「あら? それはいったい、なんのつもりでしょうか?」
「さてな」
「ヤケになった? あるいは、奥の手……? ふむ、ふむふむふむ。素晴らしい! これは、実に面白いですね。あぁ……これはもう、試さずにはいられませんね! さあ、いきますよ!」
バトルマニアなのだろうか?
やけに楽しそうな感じで、フェルミオンの気配が一気に近づいてきた。
今までと同じように突撃してきたのだろう。
単純な動きのはず。
しかしそれは、不可視の剣に絶対の自信があるということ。
人間には破ることは不可能と、高いプライドがあるということ。
ならば、それをへし折る。
軽く息を吸う。
全身に力を入れて……
「はっ!」
息を吐き出すと同時に、一歩、前に出た。
同時に剣を振り……
フェルミオンの不可視の剣を、一振りで、全て迎撃する。
「……は?」
フェルミオンの間の抜けた声が聞こえてきた。
まだ目を閉じているため、その表情はわからないが……
たぶん、声と同じように、間の抜けた感じになっているのだろう。
さらに前に踏み込んだ。
同時に剣を振り、フェルミオンに刃を……
「っ……!?」
動揺するような吐息。
同時に、フェルミオンの気配が遠くなる。
避けられたか。
動揺しているうちに、と考えていたのだけど、甘かったようだ。
「……ふぅ」
再び吐息をこぼして。
それから、ゆっくりと目を開けた。
すみません、あまりにも暑いので夏休みをください……
8月第三週の更新はお休みします。ごめんなさい……




