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156話 結婚式

 ユミナの結婚式、当日になった。


 王女の結婚。

 イルメリアは祝福ムードで、たくさんの人が訪れていた。


 その中に俺達もいる。


 先の件で警備が厳重になり、どうやって侵入しようか頭を悩ませていたのだけど……

 式当日まで待つことにした。


 当日は、王女の結婚を国全体で祝う。

 身内だけでひっそりと行うのではなくて、たくさんの人で派手に祝う。


 これは幸せな式ですよ。

 エルフの国の新しいスタートですよ。

 そういったことを内外にアピールするため、来賓が多いのだとか。


 そして、一般客も、この日だけは比較的簡単に国に入ることができた。

 言い方は悪いが、王女の式を盛り上げるための駒だ。

 エルフだけではなくて人間も混ぜることで、複数の種族に祝われている正当なものだと、そう証明したいのだろう。


 姑息な手ではあるが……

 ただ、そのおかげで、俺達も再び国に入ることができた。


「お祭りムードね」


 アルティナの言葉通り、あちらこちらに露店が並び、威勢のいい声が飛び交っている。

 道行く人は観光客が多い。

 笑顔があふれていて、幸せ、という言葉がよく似合う。


 でも、それは偽りのものだ。

 一人の女の子に不幸を押しつけている、偽物の幸せから成り立っている。


 なればこそ、そのようなものは壊してみせよう。


「ガイ師匠、これからどうするのでありますか?」

「国に侵入する方法は、この前の話し合いで決めて、こうしてうまくいったけど……そこから先は、師匠が考えるっていう流れだったけど、まだ教えてもらってないわよね」

「すまない。もったいぶるつもりはなかったんだ。ただ、どれだけ厳重な警備が敷かれているか、そこを一番に確認したかったから」


 言いつつ、周囲に軽く視線を走らせる。


 王女の結婚を祝いに来た観光客やエルフ達。

 そこに紛れて、イルメリアのものと思われる兵士達がいた。


 イルメリアの日常を知らないため、断言はできないのだけど……

 兵士の数が多いような気がした。


 各場所に必ず兵士が配置されている。

 兵士を見かけない時はなくて……

 かなり厳重な警備体制が敷かれているみたいだ。


「アルティナ、ノドカ」

「ええ」

「はい!」


 二人を見ると、とても元気な声が返ってきた。

 やる気十分、気合たっぷり、という感じだ。


 頼もしいな。

 やや心配はあるものの……

 しかし、彼女達なら、俺が望むことをやり遂げてくれるだろう。


「今回の作戦だが……」


 俺は声を潜めて、今まで考えていたことを二人に話した。


 作戦を伝えると、アルティナとノドカは驚き顔になり。

 合間に、「えぇ!?」とか「本気……?」とか、そんな声が混ざる。


 二人の驚きは当然だ。

 それだけ大胆な作戦を考えているという自覚がある。


 ただ、これが最善と考えていた。

 リスクはとても高い。

 失敗したら破滅するだろう。

 成功しても、王女をかどわかした罪で、一生、イルメリアから追われるかもしれない。


 でも、それらの覚悟はすでに済ませた。

 リスクが大きいのも承知の上。

 成功すれば、それに見合うリターンを……ユミナを助けることができる。


 なら迷うことはない。

 前に突き進むだけ。


 それは、アルティナとノドカも同じだ。

 大事な兄弟弟子のため。

 そして、大事な友達のため。


「どうする? 今なら、引き返すこともできるが……」

「「ありえない」」


 二人は即答した。


 以前にも確認したが、迷いはないらしい。

 そのまっすぐすぎるところは、時に危うくなるかもしれないが……

 しかし、今はとても頼もしい。


「まさか、今更、あたし達にやめろなんて言わないでしょうね?」

「ここまできたら、一蓮托生でありますよ!」

「わかっているよ。アルティナ、ノドカ、頼りにしているよ……三人の力を合わせれば不可能はないはずだ」

「もちろんよ!」

「はいであります!」

「ただ、油断はいけない。敵が六人いたら、とても苦戦するかもしれない」

「なんで?」

「六人の敵、六つ……無敵、という」

「「……」」


 とても冷たい目。

 しまった。

 緊張しないように、と思ったのだけど、思い切り滑ってしまったらしい。


「は、ははは……」

「もう……師匠らしいといえば師匠らしいわね」

「とにかく、がんばるのでありますよ! えいえいおー!」


 締めを取られてしまった……

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