131話 DIY
「よし」
後日。
正式に契約書を交わして、金を払い。
その後、俺達は家にやってきた。
「「うわぁ……」」
アルティナとノドカは引いていた。
先日は日が暮れ始めていて、やや暗い状態だったのだけど……
今は昼。
とても明るく、家の全容がハッキリと見えた。
うん……酷い。
その一言に尽きる。
建物としての問題はないようだけど……
あちらこちら傷んでいて、だいぶ手を入れないといけないだろう。
「改めて見ると、ものすごいおんぼろ家ね……」
「拙者、ここに住むなら馬小屋の方がいいのでありますよ……」
「はは……二人の言うことはわからないでもないが、基礎はしっかりしているはずだ」
あらかじめギルドに調査してもらっておいたので、その辺りの問題がないことはわかっている。
「ゆっくり直していこう。自分の手で家を作っていくのも、なかなか楽しいものだ」
「そういえば、師匠のおじいさんの家も手作りぽかったわね」
「ああ、その通り。あれ、全部おじいちゃんが作ったものなんだ」
「すごいわね……コンパクトだけど、でも、すごく凝っていたのに」
「えへん! ガイ師匠の師匠は、剣だけではなくて色々なことができたでありますよ」
なぜかノドカが得意そうだった。
まあ、おじいちゃんを誇らしく思う気持ちはわかる。
俺も似たような感情を抱いていた。
「と、いうわけで……がんばろうか」
「ええ!」
「はい!」
――――――――――
さっそく家の修理を始めた。
時間がかかるだろうとのことで、しばらく冒険者家業は休みだ。
とはいえ、なにかあれば連絡が来るようになっているが。
「よし、やるか」
まずは、傷んでいる箇所や腐っている箇所の調査をした。
天井と床と壁。
思っていたよりも傷んでいる。
ただ、基礎と柱はしっかりしたもので、交換の必要もないし、補修の必要もない。
いい感じだ。
「まずは、床の補修から始めていこう。ギルドに確認してもらっているが、念の為、床下などを確認しておきたいからな」
「「はーーーい」」
……そんな感じで家の補修が始まった。
まずは、傷んでいる箇所などの調査。
その後、新しい木材を切り出すなどして補修作業をする。
最後に壁紙を貼るなどして整えて、最終チェックを終える。
これの繰り返しだ。
床を直して。
壁を直して。
天井を直して。
少しずつ、少しずつ……
本当に少しずつだけど、ボロボロの家は綺麗になっていった。
そして……
――――――――――
一ヶ月後。
「「「できた!!!」」」
俺達の声が重なる。
そして、目の前には見違えるように綺麗になった家が。
広くて立派な道場。
その奥にある母屋は二階建て。
修復と同時に改築もして、より暮らしやすく、より快適に過ごせるようにした。
「おぉ、おぉ……ぬぉおおおおおーーー! ま、まさか、これほど素敵な家を拙者達が作れるなんて!」
「ね。驚きよ……これ、すごい達成感かも」
「だろう? これがDIYの醍醐味だ」
「師匠はDIYっていうより、本職みたいだったけど……」
「ですね。指示がとても的確で、木材のカットなどもミリ単位で正確でありました。ガイ師匠は、どこかで経験が?」
「いや、建築関係は触れたことはないな」
「それでこの実力……」
「師匠って、前々から万能とは思っていたけど、万能すぎない? ずるいわ」
「拙者にも、その能力を少し分けてほしいのでありますよ!」
「そう言われてもな」
なんとなく、でやっているだけなので、そういうことを言われても困る。
「まあ、何度か繰り返していけば、そのうちに身につくだろう」
「でも、もう家は完成しちゃったじゃない」
「家具はまだだろう?」
「あ」
「まあ、全部を作るのは大変だから、ある程度は買うことになるが……それでも、自分で使う机とか椅子とか、そういうのは自作にチャレンジしてもいいんじゃないか? それはそれで楽しいだろうし、そういう経験も、剣の糧になるはずだ」
「なるほど」
「拙者、目からウロコが落ちた気分でありますよ!」
「まあ、なにはともあれ」
目の前には、立派になった我が家。
そして、いい感じに日が暮れてきた。
「家の完成を祝い、さっそく新居で食事とするか。今日で完成しそうだから、料理や酒は頼んでおいたぞ」
「さっすが師匠♪」
「拙者、肉が食べたいのでありますよ!」
「ああ、食べて飲んで、今日は楽しく過ごそうか」
こうして、俺達は無事に拠点を手に入れたのだった。
……ちなみに。
新居が完成して、宴会をして、派手に食べて飲んで。
結果、アルティナとノドカが五日酔いぐらいになっていた。
楽しい時、嬉しい時もほどほどにしよう、というのが今回の教訓だろうか?
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